Yukari Shuppan
オーストラリア文化一般情報

2002年~2008年にユーカリのウェブサイトに掲載された記事を項目別に収録。
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1オーストラリアの自然 

大地・植物・動物

The bush

The bush は、オーストラリア英語で特別な意味を持つ言葉の代表といえます。辞書でbush を引いてみると、潅木、やぶ、とありますが、オーストラリアでは、海岸と砂漠と農場、都市を除いたすべてが the bush といってもいいほどです。

オーストラリア英語の bush の語源をたどってみると、英語の他にオランダ語のbusch が19世紀初頭に南アフリカのケープタウン経由で伝わった、という説があります。当時の移民船の経路をたどって来たわけです。南アフリカは最初オランダによって一部を植民地にされ、後から来た英国との間にボーア戦争がありました。オーストラリアは英国側に兵を送って戦いました。

英語圏で bush がただの名詞以上の使われ方をしているのは、オーストラリアと南アフリカで、両国とも歴史的なつながりがあるだけでなく、国土の広さ、乾いた空気など似ているところがあるからでしょうか。

さて、オーストラリア英語の bush ですが、その一つに自然のあるところ、という意味があります。 Going bush は自然の中に入って行く、という意味で、都会生活の喧騒や人間関係から逃れて疲れを癒しに行く、自然に囲まれた田舎や故郷に帰る、週末にキャンプに行くのも、going bush になります。

1986年に公開されて世界的にヒットした映画「クロコデェル・ダンディ」の舞台はニューヨークとオーストラリアのブッシュ。主人公がニューヨークから逃れて身を隠したところは、オーストラリアのブッシュでした。

オーストラリア人にとって the bush は心身の疲れを癒し、休養をとって力をためる再生の場でもあるようです。

動詞として使われて I’m bushed. の場合は、I’m lost. と同じで道に迷った、という意味になります。広大なオーストラリアの bush の中で、方向を失ったときのことを想像すると、I’m bushed. という意味あいが解かってくるような気がします。また、I’m bushed. は I’m tired. とか I’ve had it.  I’m exhausted などと同じ、疲れた、疲れ果てた、という意味にも使われています。


次に bush を使った熟語をあげておきます。

The bush capital

オーストラリアの首都キャンベラ

bush carpenter

仕事の粗雑な大工、アマチュア大工

bushed

疲れ果てること、又は道に迷うこと。

bushfire

山火事のことですが、山とは限らず都市以外のところでの火事。

bush lawyer

法律家ではないが法に詳しい人。法律的な知識のもとに議論をするのが好きな人。

bush medicine

薬草などbush の自然の中でみつける薬。

bush shower

ブリキの缶に穴を開け木につるし、水または湯を入れてシャワー代わりに使う。

bush telegraph

警察の動向を無法者たちに通報すること。デマを飛ばすこと。

bush tucker

bush で見つけられる食べ物。

bushman’s clock

クカバラの鳴き声。夜明けと夕暮れに聞かれるため。

bushranger

米語でいうアウトローのこと。無法者、山賊、追いはぎなど。オーストラリアで代表的な人物はネッド・ケリー。

bushwhacker

bush に住んでいる人。粗野な田舎者。

bushy/bushie

都会人に相対して素朴な人。

Sydney or bush

運を天に任せて一か八かの大賭けをすること。勝てばシドニーの都会暮らし、全てを失えばブッシュに隠遁する。

以上は bush の主な熟語です。このように様々に使われる bush という言葉一つから、オーストラリアの自然や開拓者たちの生活、歴史を読み取ることができるといっても過言ではないでしょう。ただ都会生活者やサラリーマンが多くなってくると共に、その意味が薄れていき、使われなくなっていく言葉があるのは、当然のことながら残念なことです。

The outback

奥地の人里離れた荒野のこと。

 オーストラリアの都市は、シドニー、メルボルン、ブリスベン、パース、アデ

レードと全てが海岸の地点から内部へだんだんと開けていきました。つまり大陸の内へ入っていくほど未開の地になって行くことになります。

 同じ荒野という意味であっても、the bush には田舎とか人々が都会生活のわずらわしさから逃れて休息する所、時々自然に帰りにいく所、という意味があります。ところが the outback には同じ自然でも人を拒むような、もう少し苛酷な意味が感じられます。地理的にも the bush よりもう少し内陸部になるでしょう。

 ではどの辺りをいうのか、というとあいまいです。しかし、ただ1ヶ所だけはっきりしているところがあります。

シドニーから内陸のほぼ中心にあるアリススプリングに向かってほぼ一直線に線を引き、その3分の1あたりにBourke という町があります。アリススプリングに向ってこの町から向こうを、outback というのだそうです。Outback と同じ意味あいで back of Bourke という言い方もあるくらいです。この言い方は面白いことにシドニーに限らず、メルボルンでもパースでも同じように使われます。


The black stump

Outback と同じような意味で、 past the black stump, back of the black stump、 または beyond the black stump、 というような使い方をします。人里はなれたoutback のずっと向こうという意味です。

ではこの the black stump はいったいどこにあるのか、ということになりますが、これは表現の一つなので具体的にどのあたり、と決まっているわけではありません。私は bush がなくなるあたりの、bushfire で焼け焦げた黒い切り株を想像したりしてみます。


Billabong 
 

  Billabong は聞き慣れない言葉です。オーストラリア以外の英語圏ではめったに耳にすることはありません。オリジナルはアボリジニーの言葉で、川原にできた水溜りのこと。それも、大きな川が曲がった辺りの川原にできる深い池のような水溜りのことをいいます。

オーストラリアの自然に密着した言葉なので、ドリームタイムのお話や植民当初のオーストラリアの自然や生活を題材にした散文や詩などによく登場しています。

一番知られているのは、Banjo Paterson作詩のWaltzing Matildaに何度も登場するbillabongでしょう。
 一番の歌詞は、Once a jolly swagman camped by a billabong, で始まり、最後の4番は、
Up jumped the swagman, sprang into the billabong, 
”You'll never catch me alive," said he.
And his ghost may be heard as you pass by that billabong
”Who'll come a waltzing Matilda with me?"
で終わっています。

 この最後の歌詞からみると、billabong は泳げない人が飛び込んだら溺れ死ぬくらいの深さ、大きさがあることになります。もちろん、乾いた大陸、といわれるオーストラリア。その年の雨の降り具合で、billabong の深さも大きさも変わってくることでしょう。大きな川のそばをドライブする機会がありましたら、ぜひbillabongをさがしてみてください。

The Centre, Salt lake, Salt-bush

ここではオーストラリアの地形、自然に関わる言葉、言い回しを3つとりあげました。

まず初めは the Centre。もちろん centre は普通、中心、中央の意味です。中心地点、文化の中心、中央集権などと、日本語では使われますので、地域的に、センターといえばキャンベラかな、と思う人もいることでしょう。ところがオーストラリアで は、定冠詞の the をつけて頭文字がキャピタルで the Centre と書くと、Central Australia州、または  Ayers Rock をさします。文字通り地図の上での中心ですが、日本語の中心、中央とはニュアンスがだいぶ違います。シドニー、メルボルン、アデレード、パース、ブリスベンというように、海岸の地点から開けていったオーストラリアです。The Centre のイメージは、中央部の砂漠、太陽と果てしなく続く乾いた大地ということになります。


Salt lake は、非常に塩分の強い湖のことですが、オーストラリアでは水分が干上がって、塩分が表面にむき出しになっている状態がほとんどです。オーストラリア南部から飛行機で中央、または北に向かって飛ぶと水のない白い大きな湖が広がっているのが見られます。

Salt-bush は普通の植物が生存不可能な塩分の強い土地や沼地に生えています。厳しい環境にも耐えられる強い植物で、世界には1400種もあるとか。そのうちの300種がオーストラリアのネイティヴとのこと。都市を離れた海岸沿いをドライブしていると、沼地などに膝丈くらいの見なれない植物の群生が見られたら salt-bush かもしれません。葉や実も塩味がするとのことです。


Southerly buster

冷暖房の利いた家やオフィスで暮らしていると、日射しや風の吹き具合などを忘れがちになります。      

クーラーも扇風機もなかった頃の昔の日本では、朝凪、夕凪、千両風などという言葉に実感があったことでしょう。夕凪の後で吹いてくる風に、浴衣の胸をはだけてうちわを使っていた祖母が、「ああ、千両風、千両風」といって、よろこんでいた姿が記憶にあります。        

オーストラリアにもこの「千両風」に似た言葉があります。気候が比較的温暖なシドニーやパースでは、冷暖房をしていない家の方が多く、扇風機すらない家庭もあります。そういう家では、日射しが傾き、涼しい風が吹いてくるのをひたすら待っています。  

Southerly busterといわれるのがその風です。夏の夕方、NSW州、QLD州南部の海岸沿いに起こる現象です。内陸から熱気を含んで吹いてくる北風(いうまでもなくオーストラリアでは北風は熱く、南風は冷たい)がしばらく凪いだ後、突然、涼しい南風が強く吹き始めます。この風を southerly busterと呼びます。以前はsoutherly busterが吹き始めると、何キロも遠く離れたところから、家々のドアというドアがバッタン、バッタンと風で開閉する音が聞こえ、その音がだんだんと近づいてくるのが、わかったということです。このsoutherly busterを歓迎する気持ちは、Henry Lawsonなどの詩人たちによって詩や歌にもうたわれています。           

Freemantle Doctor

Southerly buster に似たような現象がWest Australia州のPerthにもあり、こちらの方はFreemantle Doctorといわれています。Perthの南にあるFreemantleから風が吹いてくるから、そう呼ばれているということです。              

植物

Wattle

オーストラリアでは8月頃から早春、夏にかけてワトルの黄色い花がいたるところで咲いています。ヨーロッパからこの大陸にきて、この木を見つけた植物学者によって、ミモザ系のアカシア科に属する、と定められました。種類は900種以上あります。

Wattle という名前は、オーストラリアでつけられました。元来 イギリス英語で、オーブンやストーブの焚きつけに使う小枝や木切れ、垣根用、細く切り裂いて壁や屋根用に、あるいは壁の漆喰を塗りつける芯に使う材料になった木材に対して使った用語が wattle だったということです。

植民当初、こういった用途の木材 として最も適していたのが現地で見つけたアカシア科の植物でした。もっぱら同じ目的で使用され、このアカシア科の木は wattle と呼ばれるようになりました。

日本の竹のように、人々の身近にあり、様々な用途に使われている wattle を、NSW州では1910年に、8月1日を Wattle Day と決めました。全国的に公認されたのはつい最近のことで、1992年に、9月1日が National Wattle Day と決まりました。

緑と花の黄色の組み合わせはオーストラリアの象徴として、スポーツのユニホームなどに使われています。オリンピックなどの国際試合で、オーストラリアの選手たちが身につけているユニホームは、ワトルの葉の緑と花の黄色を基本にデザインされています。

Gumtree

学名 eucalyptus という木は、日本ではユーカリと呼ばれていますが、なぜかオーストラリアでは通称ガムツリーと呼ばれています。

Gumtree はゴムのような樹脂を出す木の総称と、Oxford English Dictionary に掲載されています。

17世紀にこの大陸を訪れた Captain Cook, Abel Tasman, William Dampier などが、原生している eucalyptus から出ていた樹脂を見て gumtree と記述報告していた記録があり、その頃から gumtree と呼ばれはじめていた、といわれます。Wattle tree と並んでオーストラリアを代表する木で、木材として、また絵の題材、図案、デザイン、物語の背景として使われ親しまれています。

Gumtree を使った慣用句

a smell of gumtree

オーストラリア人が母国を思う時の気持ちを表す言葉として使われます。

Up a gumtree

 treed (木に吊るされる、逆さ吊りにされる)という意味に関連して、窮地に陥る、非常な困難に直面する。または途方にくれる、という意味にも使われます。
 

オーストラリアン・イングリッシュの慣用句に登場する生き物たち

オーストラリアの大地に生息して来た生き物、動物や鳥たちが、オーストラリア英語でどのように扱われているか、気になって少し調べてみました。意外だったのはコアラ、ポッサム、クカバラといった、いかにもオーストラリアといった動物たちが、慣用句にほとんど登場してこないことでした。しかし、カンガルーは例外で、いろいろな言い回し、形容につかわれています。                                                                                                                 

Kangaroo

1月26日のオーストラリアデーにはそれぞれの分野でオーストラリアに貢献した人たちが表彰されます。もし動物たちも表彰されるなら、カンガルーは真っ先に表彰されているでしょう。絵葉書、ポスター、ぬいぐるみ、マンガ、商標とあらゆるところにカンガルーは登場しています。死んでからも、肉や毛皮はもちろんのこと、オスの身体の一部は迷信深い日本人の小銭入れにまで変身して、外貨の獲得に貢献しています。涙ぐましいほどの献身ぶりにもかかわらず、それほど丁重に扱われていないのは、言葉の使われ方からも推察できます。あまり良い意味には使われていません。例をみてみましょう。

Kangaroo court

リンチ、吊るし上げの意味。あるいは十分に討議をしないで一方的に判決を下す私的裁判の意味で使われます。この言い方はオーストラリアで使われ始めたのではなく、米語のスラングから逆輸入された形で、オーストラリアに入ってきたとのこと。

Kangaroos in one’s top paddock

頭が少々おかしい、気違いじみている、という意味。

Kangaroo closure

現在ではほとんど使われなくなっていますが、英議会で議案の一部だけを討議して討論を打ち切ること。カンガルー式討論終結という意味でした。

こうしてみるとカンガルーは、植民地であり文明の遅れた偏狭の地でもあった、かつてのオーストラリアにたいする偏見さえも具現しているように思われます。

Possum  

 ポッサムは、カンガルー、コアラに次いでよく知られているオーストラリアの動物です。カンガルーやコアラと違って、都市生活にも順応し、公園や住宅地にも出没する身近な野生動物です。
 夜行性の有袋類で樹上動物。南米に生息、北米にも広がっているオポッサムという動物に似ているので、ポッサムと名づけられたとか。
 外見がリスに似ていて人なつこく、パンや果物、野菜くずなどを人の手から取って食べたりもします。一見とても可愛らしいのですが、8月の末から早春にかけて芽を出す、バラやレモン、ぶどうや藤などの植木の新芽が好物なので困り者です。植木屋さんではポッサム避けのスプレーとか、液体、動物が嫌う音を出す装置などを売っていますが、どれもあまり効き目はないようです。ポッサムの被害は植木に止まらず、屋根裏に入り込んだり、ホリデーに出かけた留守中に家に入り込んだものの出られなくなり、あげくにジュータンや寝具、カーテンなどを傷つけたり、また、これらに糞尿の匂いが沁み込んだり、といった被害もあります。余談ですが、こういった被害は保険が効く場合もあるとのこと。
 現在、都市に住むポッサムと人間の共存は暗中模索といったところ。ポッサム避けのいろいろな説がありますが、いずれも決定的ではないようです。
 オーストラリアでは保護動物に指定されていますが、ニュージーランドでは外来の繁殖しすぎた害動物とみなされ、捕獲されて毛皮が外套やスリッパ、バックなどに使われ、ポッサム狩りのツアーなどもあります。 

オーストラリアで一番よく見られるのはコモン・ブラッシュテイル・ポッサムで、元来は明るいユーカリの森や乾いた林などの、いわゆるブッシュが生息地。ブッシュに入っていった人間たちが、ポッサムを観察して形容したフレーズを次にあげてみましょう。

Climb like a possum
木登りの速いこと。
Happy as a possum up a gumtree 
とっても幸せな様子。
Like a possum up a gumtree 
何事をするにも素早く、手早いこと。
Stirring the possum
多勢がそっとしておきたいことをわざわざむしかえす行為。特に政治面で使われる。

Dingo 

Dingo はオーストラリアの野生の犬です。ペットとして飼っている人もまれにいますが、dingo は肉食動物で、犬や猫のようにペット化されていないので危険性があり、ペットとして飼育することを禁じている町や州があります。
 先祖をたどると、南方系でタイ国に同類がいるとのこと。アボリジニーたちと共にこの大陸に渡って来たという説と、インドネシアなど東南アジアの漁師が連れてきて、北部の海岸に住み着いたのではないか、という説があります。渡来の時期も4万年前というのと4千年前という説があります。
 普段は単独行動を取り縄張りがありますが、大きな獲物を狙う時は、複数で共同作戦を取る場合もあります。
 入植当時はニワトリや羊、子牛などが狙われたため、防御のために銃殺したり、毒殺しましたが、後には牧場に金網を張って家畜を保護するようになりました。NSW 州のBroken Hill には、400kmに及ぶ金網の垣根があり、世界最長ということです。
 近年で dingo が注目を集めた事件では、1980年に起きたアザリア事件です。エアーズロックの近くのキャンプ場で、キャンプをしていた家族の赤ちゃん、アザリアが失踪。母親は dingo が口にくわえて連れ去ったと主張。大々的な捜査にもかかわらず、遺体が見つからないまま殺人事件に発展し、母親が逮捕され投獄されました。母親は無罪を主張し、数年後に無罪となりました。この事件はマスコミが仕立てたミステリヤスな部分が多く、真実は闇の中、と思った人も多いようです。この事件にハリウッドが注目し、メリル・ストリープが主演で映画にもなりました。
 さて英語の方ですが、カンガルーやポッサムに比べると慣用句への登場が少ないのは、それほど人間に親しまれていない、ということなのでしょうか。
 
Dingo’s breakfast
食べ物がないので朝食抜き、のこと。
Dingo date
男性が魅力を感じていない女性とセックスだけが目的でデイトをすること。

いずれも感心しない使われ方をしています。


Cockatoos and Cockies

Cockatoo は、オウム科に属する鳥で、タスマニアを含むオーストラリア全土及び島々に生息し、ニューギニアにも同種がいます。
 呼び名の方は、マレーシア語の Kakatua からきているとのこと。体は明るい色で形もオウムに似ており、鳴き声がかなり騒がしい鳥です。常に群をなして移動し、食物を探して飛び回ります。食べ物が見つかると群をなしてついばんでいますが、必ずそのうちの何羽かは群から離れて、あたりを警戒しています。危険を察知するとけたたましい鳴き声で知らせ、一群が同時に飛び立っていきます。
 その習性をとらえて、ギャンブルなどの違法行為をしている時に、警察などが来たら知らせる見張り役を cockatoo と呼ぶようになったということです。
 入植当初は、小さな土地をもっている農家を cockatoo farmer と呼んでいました。その後、効率の悪い農業を細々と営んでいる人、あるいは投げやりに農業をしている人を cockatoo と呼んだということです。
 その他、cockatoo fence というのは、不ぞろいな木など有り合わせを集めて作った粗末な柵のこと。 cockatoo gate も同じく、ありあわせでこしらえた粗末な門のこと。
 オーストラリアには CockatooIslandと呼ばれる島が二つあって、一つは西海岸の西オーストラリア州にあり、もう一つはシドニーのポートジャクソンにある囚人が集められた流刑の島。Cockatoo または Cockatoo Islanderといえば、Cockatoo Island から来たもと囚人という意味もありました。
 オーストラリア人は言葉を短くするのが大好きで、cockatoo もご多分にもれず cockyと略して言うのを良く聞きます。
 いずれにしても良い意味には使われていません。この鳥たちが入植当時の苛酷な体験と結びついていたからなのでしょうか。オーストラリア人が新開地で悪戦苦闘していた時、いつもどこかにこの鳥たちの姿が見え、小鳥のさえずりとはほど遠い、騒がしい鳴き声が聞こえていたのかもしれない、などと当時の様子を想像してみることもできそうです。

スピアーズ洋子
 

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