Dreamtime (2) |
―――ヨーロッパ人より幸せ?・・・――― |
Valeria Nemes 訳 前田晶子 |
1688年のこと、イギリスの船乗り、ウィリアム・ダンパイアーは彼の本「新 世界一周」の中でアボリジニーについてこう書いています。“ここの原住民 は世界一みじめな人々である。人間の姿はしているが、獣と大して変わらな い。” |
それから百年後、キャプテン.クックはこう書いています。“世の中で 一番哀れな人々に見えたが、本当は我々ヨーロッパ人よりはるかに幸せな人 々だ。大層な家などいらないし、寝る時は小さな洞穴の中や野宿でさえも幸 せに眠れる。” |
キャプテン.クックは学者がずっと後になってわかってきたことに、 この時すでに気づいていたのでした。 |
アボリジニーの文化は物質的には決して豊かではありませんが、精神 的には計り知れない豊かさがあります。これは彼らをとりまく地形的環境と 遊牧の生活に起因しています。最初に人がオーストラリアに移ってきた時、 耕作に適した植物も家畜になりそうな動物も見つかりませんでした。(ディ ンゴという彼らが飼っている犬がいますが、これは移住の時連れてきたもの です。)ですから、アボリジニーは狩猟と採集の民として、服や家具といっ た持ち物を必要としないで暮らしてきました。 |
アボリジニーが初めて白人に会ったのは、今から400年ほど前で、その 後白人によって書かれたいろいろな記録から、彼らの生活様式について多く のことを学ぶことができます。洞窟内の壁画や樹皮に描かれた絵からは、彼 らの風習について知ることができます。オーストラリアはさまざまな気候を 持つ巨大な島です。熱帯のジャングルもあれば、砂漠あり、山脈あり、亜熱 帯もあるといったところです。どこに住むかによって彼らの暮らしぶりはず いぶんと違いました。ある部族は小屋に住み、ポッサムやカンガルーの毛皮 のコートを着、暑い所に住む部族は、何ひとつ身につけませんでした。 |
彼らは男は狩りをし、女は食べ物を集めるといった半遊牧民族です。道具は 主として男の人が狩りの時使う武器、ブーメランや槍です。ブーメランとい うと、戻ってくる物を思い浮かべるかもしれませんが、普通狩りに使われる 物は戻ってこないブーメランです。女の人は集めた食べ物を入れるかご、植 物の根っこや小動物の巣を掘り起こすための棒などを使いました。 |
言葉は方言を含めておよそ500あり、各部族内は親族関係で結ばれていました。 厳しい掟と禁忌によって、宗教、社会の秩序が守られていました。何があろう と、この掟を破ると厳しく罰せられました。オーストラリアの苛酷な気候を生 き延びるためには重要なことでした。 |
部族はある特定の動物を自分たちのトーテムと決めていて、彼らの先祖はその 動物であると信じていた例から分かるように、彼らは住んでいる土地とそこに 棲む動物と密接に結ばれていました。白人がアボリジニーと接触し始めた当初 、アボリジニー達の物のない生活を見て、即原始的と判断してしまったことは 大きな間違いでした。現代人類学では次のようにアボリジニーをとらえていま す。“自然に歯向かわず、自然を変えようともせずに、自然の一部となって、 自分達の生活の仕方を自然のほうに合わせて生きていく賢い人々” |
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