ワイン入門 木村靖のワイン講座(2)
知っておきたい豪州ワインのあれこれ
オーストラリアのワインは世界のトップレベル
オーストラリアのワイン史は、建国の1788年、イギリス艦隊率いるアーサー・フィリップ提督が、葡萄の苗木をシドニーに植えた時に始まる。葡萄栽培は金鉱脈や新天地を求める移住者たちにより、ビクトリア州や南オーストラリア州へと広げられ、本格的にワイン醸造が始められたのは、1850年に入ってからである。当時生産されていたワインは、シェリー、ポートなど酒精強化のスタイルが主流で、その大半はイギリスに輸出されていた。
以後、ワイン産業の発展は1890年代にピークに達するが、世界不況や大戦を主な理由に多数の醸造所が姿を消し、産業は20世紀に入り徐々に低迷していくことになる。この苦難を乗り越えた醸造所は地道にワイン造りを続けるが、近代的な葡萄栽培と醸造法の導入が始まったのは1960年代である。この頃はまだテーブルワインの需要が少なく、酒精強化ワインが総生産量の70%を占めていた。
近代ワイン産業の夜明けとなった1960年代からは、シャルドネ種など優良なヨーロッパ系品種の栽培も盛んになり、伝統を誇る醸造所はワイン造りに磨きをかけ、良質テーブルワインの醸造を目的とする新規の醸造所も各地に増え始めた。過去30年の間に品質が安定化されたワインは、世界各国からの人気を集め、汚染の少ない環境で育つ葡萄から生まれる豪州ワインは、将来、世界の貴重品として注目を浴びるに違いない。
木村靖
*筆者の木村靖さんは、オーストラリアの大学でブドウ栽培学とワイン醸造学を学ばれました。
1993年より「ユーカリ」に「木村靖のワイン講座」を執筆していただき、この記事はそれを再掲載しています。
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