ドリームタイム(3)
―――創造の神話――― Valeria Nemes 訳 前田晶子アボリジニーたちは、沿岸に住む部族、内陸の砂漠地帯に住む部族、また雨の多い森林に住む部族と、住む場所によって、それぞれ異なった生活様式を作り上げていきました。着るもの、常食となる食べ物、狩りの仕方、狩りの道具などは、皆違っていました。 部族あるいは一族は少人数から大人数までいろいろで、互いに離れて暮らしていました。彼らが会うのは次のような場合に限られていました。大規模な儀式が行われる時、取引が必要になって物々交換が行われる時、狩りの一団がほかの部族の領域に入った時、このような時は、しばらく留まって狩りをするにしても、通りすぎるだけにしても、そこの部族から許可を得なければなりませんでした。 このように部族は孤立していたので、言葉も違い、社会の仕組みも違い、そして伝説ももちろん異なっています。物語は大きく分けて2種類あります。二つとも創造に関するものです。一つは彼らの周りの地形がどのように地域特有の動植物と関連して作られてきたのか。もう一つは、人間の創造について、彼らが信じている物語です。人間創造の方はしばしば動物が絡んできます。 ここに二つのお話をとりあげてみましょう。 (1)もし皆さんがフリンダーズ山脈(アデレードの北方300~500km)に行って、高い所から周囲を見渡したとしたら、山々の頂が蛇のように見えることでしょう。そして、まわりにはたくさんの湖も見えることでしょう。干上がった塩水湖のフローム湖もそこから遠くない所にあります。 アクッラとはアボリジニーの伝説によると、フリンダーズ山脈に住んでいた大蛇です。ある日、大蛇、アクッラは喉が渇いていたので、フローム湖の水を全部飲んでしまい、湖は干上がってしまいました。塩水でいっぱいになったお腹はとても重たくなったので、彼は大きなお腹で地面を削りながら家に帰りました。後には大きな峡谷ができていました。帰る道々たくさんの湖も作りました。お話を聞いてから山や湖を眺めると、このお話が生き生きとしてきます。 (2)フリンダーズ山脈にユドナムタナ鉱山と呼ばれる所があります。アボリジニーが銅を採っていた場所です。次のお話ではアボリジニーが銅鋼脈を発見した様子がわかります。 ワラビー(カンガルーの一種で体長50cmと小型)狩りから帰る途中の二人の男が丘の上で一休みしていました。その時ほかの部族の男を見かけました。男はお腹の大きな肥った人で、ウルンギ(病気を治す人または賢い人という意味)と呼ばれる人でした。彼はカーペットスネークを捕まえては腰のまわりに巻きつけていました。二人はその人が座った所からいろんな色の火花が散っているのを見て怖くなりました。二人は集落に帰ってから、皆にこの話をしました。その晩はだれも眠れませんでした。翌朝みんなしてウルンギがいた所に行ってみましたが、男の姿はありませんでした。その人が座って休んでいた所、火花が散っていた所は銅に変わっていました。後にこの場所はユドナムタナと呼ばれるようになりました。肥った大きなお腹という意味です。
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