Yukari Shuppan
オーストラリア文化一般情報

2002年~2008年にユーカリのウェブサイトに掲載された記事を項目別に収録。
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ドリームタイム(6)

            ―――男の役割―――

Valeria Nemes       訳 前田晶子

アボリジニーの社会では、ほかの似かよった種族と同じように、男は狩猟、女は採集の生活でした。部族の生活では 、二つの事柄が重要でした。第一は部族の存続です。これは食料や休む場所を確保したり、居住地域や部族民を守ることによって向上していきます。第二は儀式を行い、そしてそれを次の世代へ教え伝えていくことです。

男は猟師であり漁師でもありました。カンガルー、エミュー、ポッサム、グアナ、蛇、ウォンバット、鳥など、あらゆる動物を捕まえました。槍、ブーメラン、こん棒を使って狩りをしました。落とし穴や網、 ワナを使ったりもしました。時には、煙や薬を使って動物を穴から追い出すこともしました。魚、亀、デュゴン、いるか、ワニはモリでつき、小さい魚は網で 捕ったり、釣ったり、ワナで捕りました。植物から取った毒汁を水に流して捕ることもしました。

狩猟は子供の頃から教えられました。狩りの基本は、足跡、折れた小枝、土の乱れ方などから動物の跡を読み取る能力を養うことで、追跡と呼ばれます。道具を作るのも男の仕事です。武器、儀式の道具も作りました。一番よく知られている儀式用の道具は、埋葬の時に使う大きな柱です。込み入った彫り物がほどこされ、色もつけられていて、博物館でよく見かけるものです。道具の材料は、石、木、草、植物の繊維、骨、木の皮などです。

第二の男の役割は儀式を行うことです。宗教儀式、歌、ドリームタイムのお話、部族の掟、禁忌(タブー)を年寄りが教えます。13才頃から男の子は教えの手ほどきを受け、一生涯続きます。教育の段階に応じて若者はいろいろな儀式に参加していきますが、彼らが参加させてもらえない禁制の儀式もあります。教える側は部族の年寄りの男で、豊富な儀式の知識を持っています。儀式の中には、限られた者だけに許された秘密の儀式もありました。彼らは掟と禁忌の守護者であり、決定権も持っていました。次の物語は、若者と教える年長の者との確執のお話です。

月がお腹に傷跡があるわけは?

ある日「月」と呼ばれる一族の年長の男が若い甥を狩りに連れて行きました。ディンゴ(アボリジニーと共にアジアから渡ってきた犬)を捕まえて、殺し、熱い灰で料理をはじめた時、男は「私はまた狩りに行って来るからね。お前は食べ物にさわってはいけないよ。これはタブーだからね。」と甥に言って出かけていきました。彼が鳩をとって帰って来た時、甥の姿も食べ物も消えていました。見回すと、捕まえられないような崖のてっぺんに座っているのを見つけました。甥は叔父に向かって叫びました。「叔父さんはいつも僕にタブーだと言う。見ててごらん。今このディンゴを食べてやるから。」男は大変怒って、小枝を見つけてそれでハシゴを作って崖に上っていきました。甥はハシゴをゆすって押し倒してしまいました。男(月)はハシゴから落ち、お腹が破けてしまいました。こうして月はお腹に傷跡があるようになりました。

 

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