―――女の役割と仕事―――

Valeria Nemes       訳　前田晶子

半遊牧、狩猟と採集の民アボリジニーの社会では、食料集めと料理、 子供の世話、生活必需品の作成、それと休憩所や小屋を作る男達の手伝い等が女の役割で した。以下は白人が来る前のアボリジニーの生活で、現在も一部で続けられています。

女は若いうちに結婚します。男が何人かの妻を持つ一夫多妻制の部族もいます。このような場合は、年上の女が後から家に入ってきた若い女に日常の仕事を教え込みます。

食料集めは、どんな物が食料となるか、また何がどんな所にあるかを知っていなければならず、なかなか経験を要する仕事です。食料となる物は木苺類、木や潅木になっている果物です。木の根っこも棒を使って掘り出し食料にしました。小動物を見つけては巣穴を掘って捕まえるのも、女の仕事です。木の皮の間からはウィチェティ　グラブ（witchetty grubs 、オーストラリアの虫。太くて幅が広く木の皮の間に住む。アボリジニーのよい蛋白質源。）を集めます。

料理をする時は、小さな穴を掘り、そこで火をおこします。熱い灰だけになったら、そこへ大きな葉にのせたり包んだりした肉を置きます。石を火のそばに置き、いっしょに熱して熱を長く保つ工夫もします。草の種から粉を作り、水と混ぜてのり状にして、そのまま又は焼いて食べたりします。

水汲みも、薪を集めるのと同様に女の仕事です。住む場所を移る時は女が責任を持って大切な火種を守ります。次の居住地で、この火種から簡単に火をおこすことができます。

子供達はもちろん女の手で育てられます。男の子は８歳位になると、少しずつ女の社会から離され、１３歳位になると完全に男の中に入り教育されていきます。

いろいろな材料を使って、女は日用品も作り出します。物を運ぶかご、水を運ぶ入れ物などです。彼女らは大変器用で、丈 夫な草の繊維から水のもれない入れ物を作ったり、ほかに敷物、装飾用の 織物も編んだりします。

女達は新しい居住地で家族用の小屋や休み場所を建てる男達の手伝いもしなければなりません。女達の儀式は男達とは別になっています。儀式の中には女だけの秘密になっているものもあります。

次は、危険を伴う食料集めについてのお話です。

ある日、女２人が食料を集める旅に出かけました。採るものはグラストリィー（オーストラリアの潅木）の葉とおいしい実です。二人は谷川にやってきました。一人は干上がった川底を歩いて葉を集めることで満足していました。もう一人は急な岩場を登りながら葉を集めていました。彼女はグラストリィーをつかんでは危険な高い所まで登って行きました。枝につかまりながら同時に葉 も採っていました。もう少しで崖のてっぺんに届きそうになった時、突然つかんでいた木の根が抜けて、はるか下の川底へ落ちていきました。女の体は粉々に砕けてしまいました。それ以来、彼女が落ちた場所にはたくさんのグラストリィーが生えるようになりました。もし、そこであなたが一晩明かしたなら、いまでも落ちていく女の叫び声が聞こえることでしょう。

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