Yukari Shuppan
オーストラリア文化一般情報

2002年~2008年にユーカリのウェブサイトに掲載された記事を項目別に収録。
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Yukari - April - Street
 
MELBOURNE Street by Street (7)
 
Collins Street   ―  その 7 ― 
ケン・オハラ 
Collins Street には歴史的な建物やいわくのある建物が多いので、それらの過去を返り見ながら通ると時間がかかる。今回は King Street からSpencer Street にかけての最後のブロックについて書こう。 
通常、不動産価格がくずれ始める時、一番先に打撃を受けるのはシティのはずれである。そして回復に時間がかかるのも同じくシティのはずれである。この最後のブロックもその例にもれない。 

538~544 Collins Street。King Streetとの北側の角にあたるこの建物は1910 年に建設された。現在はヴィクトリア州の歴史的遺産建造物のリストに載っている。もし仮に歴史的経済破綻のリストが作られるとしたら、この建物は間違いなくそのリストに載るだろう。The Sun Alliance Insurance Group of England はこのビルの改造改築に $14,500,000 を投資して1989年に完成させた。しかし、6年後の1995年にたった$3,000,000 で売却した。 

もし仮に夢破れた挫折のリストを作るとしたら、このブロックの南にあたる大駐車場からスタートすることになるだろう。Mainline Corporation は Collins Street の両端の大々的な開発の青写真を持っていた。1973年、計画実行に$10,000,000 を投資することにした。 Mainline はトップエンドの Hotel Sofitel, Collins Placeの開発に手をつけたが、早くも翌年の1974年に破綻してしまった。他の業者が事業を引き継ぎ、開発を完成させたが、Mainlineの青写真は夢に終わってしまったのである。 

さて、大駐車場に話を戻そう。ここを開発すべく、次に現れたのがthe Grollo Brothers だった。1981年に$5,000,000で入手。40階の高層ビルを建てる計画だったが着手することなく1985年に$27,250,000で売却し大きな利益をあげた。購入したのは the State Superannuation Board(ヴィクトリア州の公務員年金基金管理)。1988年に35階建てのビルディング建設の青写真を描いたが、今だに据え置かれたままだ。この一画は、夢を抱いた富豪が現れ、再びチャレンジしてくるであろう次の不動産ブームが訪れるまで、静かに待っていることであろう。 

607~613 Collins Street のオフィスビル。外見は何の変哲もない建物であるが、経済面からのいきさつをみるとなかなか興味深い。The ANZ Bank’s pension fundは1975年にここを$1,050,000で購入。1990年に$4,250,000でオファーがあったが、拒否。しかし、3年後の1993年に$840,000で中国系のビジネスグループへ手放している。さらに1998年には$1,650,000で売却された。 

あと数歩でCollins Street が終わるのでSpencer Street を右に曲がるとしよう。次回は Bourke Street に移りたいと思うが、その前に Little Collins との角にある106~120 Spencer Street の23階建てのビルディングにふれておこう。ここは1973年にメルボルン水道局が$16,000,000を投じて建設した。しかし、あろうことか1年後に正面玄関のブルーストーンが落ち始めた。これを修理するのに6年かかり、その費用がなんと$20,000,000。メルボルン水道局はこのビルを1995年に $10,5000,000 で the Stamoulis Family に売却した。ニューオーナーはギリシャ系移民で Gold Medal ソフトドリンクがあたって大儲け。余勢をかって不動産業界に進出、投資している。2000年に、このビルの屋上に古代ギリシャの寺院を形どった会議室を建てる許可をメルボルンカウンシルに申請している。
Copyright: Ken O'hara

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