ドリームタイム(9)
―――水辺に住むアボリニジー――― Valeria Nemes 訳 前田晶子オーストラリアン アボリジニーは住んでいた場所の地理条件や気候によって、異なった生活様式を形成していきました。常食、住まい(小屋、たて穴、 よこ穴、洞窟など)、衣服(あるいは全く身にまとわない)などが異なっていきました。 川や湖のそば、海岸近くに住む部族は、水辺の生活に合った道具を創意工夫していきました。大陸中央部に住む部族では見られないものでした。白人の探検家の記録によると、クレイフィッシュ(海のざりがに)、ムール貝、その他の貝、えび類を採っていたようです。女達は植物の葦からいかだを作り、漁に出かけていきました。彼女達は水に潜って魚や貝を採ったことでしょう。いかだの上で火をおこして、料理もしました。海草と砂で作った台の上で火をおこすので、いかだを燃やすこともありませんでした。 葦で作るいかだの他、大きな木の皮を切り落として作るカヌーもありました。一枚の皮からカヌーを作ります。カヌーを作るために削られ、木の形がゆがんだまま生き続けた木を今でも見ることがあります。強くするために、木の皮を何枚かつなぎ合わせて作ったカヌーもありました。白人が来る300年ほど前には、彼らの住んでいる海岸にやって来たインドネシアの漁師の船に倣った丸木舟も作るようになりました。
次にあげるドリームタイムのお話は水にまつわる悲劇のお話です。 メルビル島のティーウィー部族の長、プルクパリには、妻と小さな男の子がいました。しかし、妻は愛人を持っていて、子供を構ってやりませんでした。男の子は母親がきちんと子守をしなかったため、死んでしまいました。 プルクパリは大変怒って妻にこん棒状のブーメランで殴りかかったので、妻はジャングルへ逃げて行ってしまいました。次に彼は、愛人のジャパラのところへ行き、襲いかかり、顔に深い傷を負わせました。そして、小さな息子の亡骸を抱いて海に入って死んでしまいました。死んだ付近の海はとても危険な場所になり、皆そのあたりを避けて通るようになりました。 一方愛人のジャパラは、大変後悔し、自分から月に変わってしまいました。こういうわけで、彼の顔の傷跡は今だに月の面に見られ、月になったジャパラは、月 の初めの新月の頃、3日間死ぬことを繰り返しているのです。
* この記事の無断転載、借用は著作権法により禁じられています。 (私的な学習、リサーチ、評論、書評のための利用は例外とされています。)
|
ドリームタイム(9)
―――水辺に住むアボリニジー――― Valeria Nemes 訳 前田晶子オーストラリアン アボリジニーは住んでいた場所の地理条件や気候によって、異なった生活様式を形成していきました。常食、住まい(小屋、たて穴、 よこ穴、洞窟など)、衣服(あるいは全く身にまとわない)などが異なっていきました。 川や湖のそば、海岸近くに住む部族は、水辺の生活に合った道具を創意工夫していきました。大陸中央部に住む部族では見られないものでした。白人の探検家の記録によると、クレイフィッシュ(海のざりがに)、ムール貝、その他の貝、えび類を採っていたようです。女達は植物の葦からいかだを作り、漁に出かけていきました。彼女達は水に潜って魚や貝を採ったことでしょう。いかだの上で火をおこして、料理もしました。海草と砂で作った台の上で火をおこすので、いかだを燃やすこともありませんでした。 葦で作るいかだの他、大きな木の皮を切り落として作るカヌーもありました。一枚の皮からカヌーを作ります。カヌーを作るために削られ、木の形がゆがんだまま生き続けた木を今でも見ることがあります。強くするために、木の皮を何枚かつなぎ合わせて作ったカヌーもありました。白人が来る300年ほど前には、彼らの住んでいる海岸にやって来たインドネシアの漁師の船に倣った丸木舟も作るようになりました。
次にあげるドリームタイムのお話は水にまつわる悲劇のお話です。 メルビル島のティーウィー部族の長、プルクパリには、妻と小さな男の子がいました。しかし、妻は愛人を持っていて、子供を構ってやりませんでした。男の子は母親がきちんと子守をしなかったため、死んでしまいました。 プルクパリは大変怒って妻にこん棒状のブーメランで殴りかかったので、妻はジャングルへ逃げて行ってしまいました。次に彼は、愛人のジャパラのところへ行き、襲いかかり、顔に深い傷を負わせました。そして、小さな息子の亡骸を抱いて海に入って死んでしまいました。死んだ付近の海はとても危険な場所になり、皆そのあたりを避けて通るようになりました。 一方愛人のジャパラは、この出来事を見て、大変後悔し、自分から月に変わってしまいました。こういうわけで、彼の顔の傷跡は今だに月の面に見られ、月になったジャパラは、月 の初めの新月の頃、3日間死ぬことを繰り返しているのです。
* この記事の無断転載、借用は著作権法により禁じられています。 (私的な学習、リサーチ、評論、書評のための利用は例外とされています。)
|