MELBOURNE Street by Street (10) |
Bourke Street ― その 4 ― |
ケン・オハラ |
今月はBourke Street と William Street の角まで来たが、ちょっと立ち止まって、ここにある建物を眺めてみよう。ケン・オハラには奇妙な取り合わせと思える新旧のビルが見える。 向かいの北東の角には、建築の粋ともいえる the old Goldsbrough Mort building がある。 さて、今から約150年前、オーストラリアに農業、牧畜、鉱山業が富をもたらしていた頃の三大会社は Goldsbrough Mort, Elder Smith, Dalgety であった。 Frederick Dalgety は 1846年に 461 Bourke Street でビジネスをスタートした。(120年後の現在でも 461 Bourke Street は the Dalgety company がオーナーである。) 1861年、浪費が少しばかり可能な状態にあった Goldsbrough Mort は、ここにウールの販売店とオフィスビルの建設をはじめて1862年に完成させた。 19世紀に建てられたこれらのビルディングは老朽化が進んでいたが、1981年に修復保存工事が始められ、1984年には過去の栄光を留めた建物が完成し、$7.5million で買い手がついた。しかし、この購入者はついていなかった。1988年に $15million のオファーがあったのだが、さらなる値上がりを待ちすぎ機を逸した。このビルは1996年に $3.8million で抵当権者の the National Australia Bank(隣にあるビル)によって売却された。 しかし、ここに佇んでいると、もっと大きな破たんの傷跡を残した建物がいくつか見える。 読者のみなさんはすでにご承知のように、ケン・オハラは経済破綻のありように興味をそそられていて、ここにはオーストラリアで最大、最良の不動産グループの最悪の決断の例をみることができる。 さて、オーストラリアで一番の不動産ディベロッパーは? と聞かれたら誰もがLend Lease Corporation と答えるはずだ。 Lend Lease は 546~560 Bourke Street と Little Bourke Street の間の William Street の北西の角から西側にある不動産すべてを $100 million で購入した。 Grand Central と銘打った一大開発計画がたてられた。それから次の10年間維持費や利息などにさらに $100 million が投入された。しかしながらこの計画は放棄された。不動産は1998年に $20 million で売却された。 The AMP Society はオーストラリアで一番の不動産インベスターである。 Lend Lease と同じように10年前、市場のピークで、ここに $100 million を投資した。 南東の角、 140 William Street は以前は BHP House と呼ばれ、その色と形から、別名The Black stump とも呼ばれていた。BHPの鉄鋼を使用してデザインされたビルは、BHP を象徴した威風堂々としたものである。The AMP はこのビルを30数年前に建設し、BHP に50年契約でリースした。1988年、当時の不動産の市場価格がピークに達した時、the AMP は $91million を出費してリース権を買い戻した。 Beyond the black stump はオーストラリア英語のスラングで、遠く、遥かかなた、という意味である。 140 William Street の隣は、beyond the black stump
遥かかなたの砂漠を思わせる。 ケン・オハラは1988年に $100 million の金を持っていなくて良かったと思う。あの時もしそれだけの金をもっていたら、この一画に投資してすべてを失っていたかもしれない、ではないか。
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