ワインに親しもう (10) ――― スパークリングワイン――― 前田晶子 お祝いの席の乾杯には欠かせないシャンペンことスパークリングワインは、これから年末にかけて登場する機会が多くなります。まずは、11月5日のメルボルンカップを手始めに、クリスマス、ニューイヤーとこのワインの売り上げはうなぎ登りです。ベネディクト会の修道僧、ドン ペリニヨンは修道院でワインを作っているうち、偶然にビンの中で2次醗酵したワインが、グラスに注いだ時魔法のように気泡を立てることを発見しました。気泡はビンの中に閉じ込められた炭酸ガスでした。これがシャンペンの始まりです。 オランダの旧家シャンパン家のクロード モエは18世紀半ばフランスに渡り、その孫の代になってモエ シャンドン社としてワインの製造を始めました。ドン ペリニヨンに倣って独自の方法を開発し、シャンペンの本家本元として君臨していました。ところがモエ シャンドン社の製法に習って皆がこのワインを作り出し、シャンペンとして売り出したのに業を煮やしたモエ シャンドンは、異議を申し立てました。「シャンペンと呼べるのはフランスのモエ シャンドンのワインだけである。そのほかのワインはスパークリングワインと呼ぶべし。」そして、今では本家本元のシャンペン以外はすべてスパークリングワインと呼ばなくてはならなくなりました。 スパークリングワインの製法の特徴は、ビンの中でおこなわれる2次醗酵です。醗酵を終えたワインをビンに詰め、そこへ新たに酵母と砂糖を加えます。王冠で密閉します。真横に寝かせ静かに2次醗酵させます。酵母は砂糖を栄養源として炭酸ガスを作りますが、王冠で閉じられているので、ガスはビンの中に封じ込められます。こうして炭酸ガス入りのワインが作られます。上等なワインはグラスに注いだ時、細かな泡がいつまでも立ち続けます。栓を抜く時の派手な音と華やかな見た目がお祝いの場にふさわしいワインです。 スパークリングワインは白ワイン用のぶどうから作られます。細心の注意を払って丁寧に作られるので、このワインは少し高めになります。毎日飲むワインではないので、お財布のひもをゆるめていいものを買ってみましょう。値段と質は大体比例します。きっと会も盛り上がることでしょう。ただしお酒に弱い方は気をつけてください。口当たりがよいのでつい飲みすぎてしまいます。 最近では、シラーズを使った赤のスパークリングワインも出回っています。コクがあってなかなかおいしいので、お試しください。
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