日豪教育事情 (11)
日本から
坂詰貴司
今回でこの欄の執筆も一応区切りとなります。 1月号から初めて6回目になる今回は現在の日本の教育の問題点について述べてみたいと思います。
①底上げ教育は本当によいのか?
戦後日本の教育は戦前の反省からいわゆる「底上げ教育」を行ってきました。高度経済成長の時期には、社会の要求に合わせてきました。ところが現在のように低成長な時代には、その方針では難しいのではないでしょうか?この教育方法のよいところは、限りなく全国一律な内容の教育を行い、国民が最低限の知識を持つことができたことです。ところがもう少し物事を追求したい生徒の要求には答えてきたのでしょうか?競争が激しい学校に入学するために勉強する生徒にとっては、学校の他に塾などに通えば欲求がみたされたかもしれません。でもより高度な学問をしたい生徒にとっては、自分で勉強する以外の選択肢が少ないのではないでしょうか?例えば高等学校から大学に「飛び入学」できる大学は今のところ2大学しかありません。素晴らしい才能を持っている生徒を伸ばす機会がもう少しあってもよいと思います。
②指導要領は必要なのか?
現在の指導要領は世間からの批判を浴びて、急遽手直しをするような状況になってきています。もちろん大枠は必要だと思いますが、現在のような細かいものは必要なのでしょうか?教科書も含めてもう少し各学校の裁量に任せても構わないと思います。
③クラブ活動は学校主体でよいのか?
日本の学校では放課後に所属学校でクラブ活動を行いますがこれはよいことなのでしょうか?このことによって在学中、ほとんどの時間をその学校に縛られてすごすことになるのは、よいことでしょうか? 幅の広い視野を持ったり、様々な友達に出会うためにも、クラブ活動は地域やスポーツクラブ主体に行うべきだと思います。
④中学校と高等学校が別れている必要があるのか?
最近では6年間一貫教育ができる、中等教育学校が認められましたが、まだまだごくわずかです。この6年間を受験勉強中心に過ごすことが生徒のためになるのでしょうか?義務教育の期間は同じだとしても、6年制の中等学校に変えるべきだと思います。
⑤大学の数が多すぎるのではないだろうか?
日本は少子化の影響で短期大学では半分以上、4年生大学でも3割程度は定員割れをしています。そして廃業する私立大学も現れています。過去において私立大学の中には利益になるという目的のために設立した大学もあると聞いたことがあります。設立理由は何であれ、大学として最低限のことを実行すればよろしいのですが・・・。調べてみると研究をしていなかったり、博士号を取得している教授が少ない大学は決して少なくないのです。現在500大学くらいありますが、半分くらいにしても問題がないと思います。
⑥教育評論家が多すぎないか。
誰でも学校に通った経験があるはずです。そして自分の子供がいたら、学校には関わりを持つでしょう。ただ残念なことに自分の子供が通学しているときには興味感心があるのですが、卒業すれば急激に低下します。それでいて自分には関係がないかのように、学校や教育に関して論じる人が多いような気がします。これではいつまでたっても教育はよくならないのではないでしょうか?国民挙げて教育について真剣に取り組むようになれば、現状の問題点がいくつか解決できると思います。学校だけで解決するのはもう限界です。
以上私なりに問題点を挙げてみました。
ご意見がございましたら以下の電子メールまでお願いします。
takashi.sakazume@nifty.ne.jp
今回までの6回本当にお世話になりました。