ドリームタイム(12)
ボディペインティング
Valeria Nemes 訳 前田晶子アボリジニーは長い間、自分達の体や、道具(石、木)、そして身近にある自然物(木、岩、洞窟)に色を使って長い間模様を描き続けてきました。又、地面にも描いてきました。描かれた模様は単なる飾りではなく、それぞれ意味があり、現代の私達が本を読むのと同じように、彼らは模様を識別して読み取ります。模様は人の形であったり、動物であったり、ビラボン(オーストラリア英語で茶色く濁った水溜り、池、湖のこと)と広大な景色であったり、山や川であったりしました。時には込み入ったお話を伝えたりもしました。地面や木の幹に、手の込んだ絵を描き、それらは順番に見て歩いて人々に読まれて、お話が進んでいくものでした。 絵を描く絵の具には色々な材料が使われました。体に使われる白い色には粘土や石膏を使いました。黄色には、蟻の巣の中から取った粉、又は、ある種のきのこを使いました。炭は黒に使われました。最もよく使われるオカーと呼ばれる赤い色は岩や粘土から採りました。運良く色の材料がある地域に住んでいる部族以外は、必需品であるこれらの顔料を求めて、長い距離を旅したり、ほかの部族と取引して手に入れなければなりませんでした。植物をつぶして汁を絞り、描く前の下地に糊として使いました。 体に描く場合(ボディペインティング)、自分で描く時もあり、人に描いてもらうこともありました。大きな儀式の時は必ず描きます。アボリジニーは服を持たないので、ボディペインティングは儀式での役割、地位、身分などを表わしました。時には人々はボディペインティングで超能力者を見分けたりもしました。ボディペインティングを仕上げるには半日もかかりました。 岩や洞窟の壁に描く場合は、型板手法をよく使いました。手を岩や壁の表面におき、口に水と顔料を含んで手の上から吹き付けます。手の替わりに動物や鳥の足を使う時もあります。また、エックス線画と呼ばれる描き方もしました。動物を外側から描くのではなく、ちようどレントゲンで見たように、内部の骨格や内臓を描く描き方です。 次にあげるドリームタイムのお話は、顔料の由来を説明してくれます。 昔々、フリンダーズ山脈にウィタナが住んでいました。ウィタナはアボリジニーにイニシエーションの儀式を教える役目を担っている超能力者でした。男子の割礼もそのうちの一つです。割礼では、赤いオカーが使われ、後に大きくなってから、体に傷を付けて色を塗りこみます。いわゆる刺青ですが、現在の刺青(タトゥー)より深く傷をつけるものです。刺青の儀式では黒い色が使われます。アボリジニー達にこの赤と黒の顔料を与えるために、ウィタナはフリンダーズ山脈に野宿して、両方の腕に傷をつけました。片方の腕から流れ出た血は赤い岩に変わりました。もう片方の腕から流れ出た血は黒い岩に変わりました。こうして、フリンダーズ山脈には、毎年遠くから儀式に必要な赤と黒の石を手に入れるために、アボリジニーがやって来るようになりました。
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