Yukari Shuppan
ワイン入門（12） 木村靖のワイン講座
デザートワイン
デザートワインは、葡萄の天然の高糖分が必要となるため、乾燥した温暖地で生産される。甘口の白ワイン（晩摘みワイン late picked wine と貴腐ワイン botｒytised wine)) と、ポート(port) やリキュール・マスカット（liqueur Muscat) など酒精強化ワイン（フォーティファイド・ワイン fortified wine) の二つのタイプがあり、一般に食後酒として果物やチーズ、ケーキ、コーヒーと共に楽しまれている。
前者は葡萄を過熟させた高糖分のセミヨン種と、ソーヴィニョン・ブラン種（フランスのソーテルヌ原産）のブレンドや、リースリング種（ドイツとフランスのライン川地域原産）から造られたものが良質とされる。貴腐ワインは、これらの葡萄の過熟中に付着する特殊のカビ(botrytis)から出る味がワインの香味に現れ、カビの発生条件が難しいために生産量が少なく、高価なワインとなる。
一方ポートはポルトガルが原産。オーストラリアではシラーズ種（フランス原産）などから独特で伝統的な良質ワインが造られている。ポートには、甘味のやや少ないヴィンテージ・ポート（Vintage Port 収穫年号入り）とトゥニー・ポート（Tawny Port 原酒ブレンド）がある。
ビクトリア州ラザグレン地区 (Rutherglen) で生産されているリキュール・マスカット（Liqueur Muscat) 、リキュール・トーケイ (Liqueur Tokay) は、ユニークな存在として世界的にも有名である。糖度の高い晩摘み葡萄から造られる酒精強化ワインは、発酵中のまだ甘味の多いワインにワインを蒸留して造ったブランデーを添加して発酵を止めるため、アルコール度の高い甘口ワインができる。スペイン原産の甘口のシェリーも同製法で造られる。
木村靖
＊筆者の木村靖さんは、オーストラリアの大学でブドウ栽培学とワイン醸造学を学ばれました。
1993年より「ユーカリ」に「木村靖のワイン講座」を執筆していただき、この記事はそれを再掲載しています。
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