Yukari Shuppan
オーストラリア文化一般情報

2002年~2008年にユーカリのウェブサイトに掲載された記事を項目別に収録。
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ドリームタイム(13)

          子供は忙しい

Valeria Nemes       訳 前田晶子

現代の社会では、子供達は皆学校へ行って、少なくとも半日は過ごしています。宿題もあり、スポーツや音楽の行事やレッスンもあって、忙しい毎日を送っています。昔々、人々が村や部落の一員として集団生活をしていた時代の子供と比べたら、今の子供の方がずっと忙しく、また、系統だった教育の基に生活していると思われがちです。

ところが、部族単位で集団生活をしていたアボリジニーの子供は、今の私達が想像する以上に忙しくしていました。女の子は、小さい時から母親を助けて家事を手伝わされていました。植物の種を集めて、きれいにして、より分けて、粉にして・・・といった綿々と続く作業などは、子供の仕事でした。それから、女の仕事である食料集めにもついて行き、根っこ、球根、果物を採りました。つるを編んだり、木の皮から器を作るといった日用品の製作も毎日習っていきました。魚とりやとかげを掘り出したり、ウィチティーグラブ(オーストラリアの虫、アボリジニーのよい蛋白源)をつかまえる手伝いもしました。

男の子はもっと規則的な生活をしていました。小さい頃から、自分の母親や姉妹達から度々離されては、大人の男の仲間入りをするための訓練を受けていました。ブーメランと楯の使い方も習わなければなりませんでした。男の子は走ったり、けんかしたりする時間もかなりありました。しかし、このような遊びの時間も、将来狩をする時や、敵と戦う時の技を身に着けるための準備と見なされていました。

男の子も女の子も、歌と踊りとドリームタイムのお話を学ばなければなりませんでした。子供達も時には大人といっしょにボール遊びをしました。ボールは石膏と水を混ぜて作ったものでした。

子供の誕生の不思議についての短いドリームタイムのお話をしてみましょう。北にあるグルート アイランド(Groot Eylandt)島に住む部族の間で信じられていたお話です。

1年は雨期と乾期の二つの季節に分かれていました。この二つの季節は、北東の風と南西の風によってもたらされました。人々は、この風が霊の世界から子供の霊を運んでくると思っていました。子供の霊は、背の高い草のかげに隠れていて、この人は安心できると思った女の人が通りかかると、女の人の体に入り、人間の赤ちゃんとして生まれてくるのです。

 

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