Yukari Shuppan
オーストラリア文化一般情報

2002年~2008年にユーカリのウェブサイトに掲載された記事を項目別に収録。
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ドリームタイム(14)

医術師(Medicine men)

Valeria Nemes 訳 前田晶子

アボリジニーの部族には、特別な人々と皆から認められている医術師と呼ばれる人がいました。医術師も初めは、行事に参加して、家族を持ち、他の普通の人々と同じように生活していました。ところが他の人とは何かしら違う面があるので、特別な人と見なされ、次第に離れていきました。自然現象を観察する能力が優れていたり、人の行動を見抜く力があるからでした。

アボリジニーは医術師が年取って死ぬと、特別な霊になると信じていました。その霊はウルギスと呼ばれました。ウルギスはいつも部族の人々を観察していて、霊感が優れている人を見つけると、その人を医術師にすべく訓練し始めます。ウルギスは夢の中でその人を鷹に変え、空に連れて行きます。そして、医術師として、人の病気をいやす力を身につけるために知っておかなくてはならない秘密の事柄を教えていきます。こういう訓練を4、5回繰り返して、医術師になっていきます。

医術師は人をいやすこともしますが、逆に人を滅ぼしたり、害を加えることもできます。又次のような自然現象を説明しているドリームタイムのお話を部族の中にしっかりと残しておくことも彼らの役割でした。

         昼と夜の由来

昔々、ビラと呼ばれる太陽女がいました。ビラはとても悪い女で、人間を食べていました。飼っている犬に手伝わせて、人間を引きずってきていました。

とかげ男、クドゥヌとケッコー(小とかげ男 )は、人間が食べられているのを気の毒に思い、仕返しをしようと決めました。クドゥヌはブーメランを投げて、太陽女に怪我をさせました。すると、太陽女は火の玉に変身して、地平線の彼方へ転がって行ってしまいました。世界は真っ暗になりました。

そこで、トカゲ男は残っているブーメランをあちこちの方角に投げてみました。初めに北、次に南、そして西に投げてみましたが、何事も起こらずまだ暗いままでした。最後に東の方角に投げました。人々とトカゲ男達が見ている前で、大きな火の玉が東から昇り、そして空を横切って西に消えていきました。こうして、昼と夜が作られました。

フリンダーズ山脈のアボリジニー達はケッコー(小とかげ)やグアナ(大とかげ)を決して殺しません。彼らは人間を救い、昼と夜を作ったからです。

 

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