Yukari Shuppan
オーストラリア文化一般情報

2002年~2008年にユーカリのウェブサイトに掲載された記事を項目別に収録。
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ワイン入門(15) 木村靖のワイン講座


オーストラリアの赤ワイン品種 その1

シラーズ Shiraz                             

 
 
シラーズは、原産国のフランスではシラー (syrah) と呼ばれ、同国南東部にあるローヌ地方北部のエルミタージ地区で、主に栽培されている葡萄の品種名である。

 オーストラリアでのシラーズの栽培歴は150年余りと長い。温暖乾燥の環境に適応し、果実の香味がしっかりとワインに現れることから、テーブルワインを初め、伝統的にポートワインなど酒精強化ワインの原料にも使われている。

 現在、シラーズは品種別国内生産量のトップにあり、本家フランスの生産量をはるかに超える、オーストラリアを代表する赤ワインに成長している。こうした背景から、伝統的にシラーズを生産するオーストラリアの醸造所では、シラーズのことを、ハーミタージ hermitage (エルミタージの英語発音)とラベルに表示することがある。

 一般的にシラーズから造られたワインは、ブラックベリー、ペパー、スパイス、ユーカリの葉のような香味を現すのが特徴である。ハンターヴァレー地区(Hunter valley, N. S. W.) やバロッサヴァレー地区(Barossa Valley S. A.) のように、温暖な伝統のある産地で造られるワインは、渋味とあるコール度がやや強く濃厚な味。グランピアン地区(Grampians Vic.)やローワー・グレート・サザン地区(Lower Great Southern W. A.)、クナワーラ地区(Coonawarra S. A.) などの寒冷地で造られるワインは、ソフトでスパイシーな香味が繊細に現れる。

 このように同じ品種のワインでも、葡萄が栽培される環境と土壌の変化により、ワインのタイプが異なることは、すべてのワインにも共通することであり、特にシラーズはその典型である。通常、オーストラリアのシラーズワインは、他の赤ワインより安価であることから、庶民に親しみのあるワインタイプが多い。また、樹齢の古い葡萄や、特選された葡萄から造られたワインは、瓶熟成が20年以上と長く、高価で、世界のトップクラスの仲間入りをするものもある。

木村靖

*筆者の木村靖さんは、オーストラリアの大学でブドウ栽培学とワイン醸造学を学ばれました。
  1993年より「ユーカリ」に「木村靖のワイン講座」を執筆していただき、この記事はそれを再掲載しています。
*この記事の無断転載・借用を禁じます。

 

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