ワイン入門(16) 木村靖のワイン講座
オーストラリアの赤ワイン品種 その2
ピノ・ノアール Pinot Noir
フランス中東部フルゴーニュ(Bourgogne)(英語では
Burgundy
と呼ぶ)地方で生まれ、世界で最も高価な赤ワインの一つに数えられるワインは、このピノ・ノアール種から造られる。
また、同国北部のシャンパーニュウ(Champagne)
地方で造られる、有名なシャンペンの原料に用いられるのも、この品種である。この優等品種は、世界各国のワイン産地でも栽培が試みられているが、栽培に適した気候や土壌が限られ、ワイン醸造にも知識と経験を要する理由から、上記の原産地以外での良質なワイン造りは難しいといわれている。
オーストラリアでの同種の栽培歴は、30年余り、と浅い。しかし、この定説をくつがえすかのように、ピノ・ノアールの品質は、世界各国からも高い評価を受け、シャンペン製法で造られるスパ-クリング・ワインの高級化も伴い、同種栽培の拡張が急速に進んでいる。
このワインの特徴は、ストロベリー・カシス(黒すぐり)、プラムのような果実、さらにオーク樽で熟成されることで、スパイスや甘いチョコのような香味が豊富にあらわれることにある。気ままで敏感な性格をもつワインであるが、与えられた条件が揃うと、力強さに華麗な気品を兼ねた高級ワインができあがる。他のワインと比べ、渋味が少なくソフトなタイプなので、初心者向きの赤ワインといえ、日本食など幅広い料理に合うが、生産量が少ないため、多少値が上がる。
寒冷な気候を好むこの品種は、特にヴィクトリア州メルボルン近郊のワイン産地であるヤラ・ヴァレー(Yarra Valley)、モーニングトン・ペニンシュラ(Mornington Peninsula)、ジュロング(Geelong) で良質なワインが造られている。生産量こそ少ないが、タスマニア州、南オーストラリアのアデレードヒルズ (Adelaide Hills)、西オーストラリア州のローワー・グレート・サザン(Lower Great Southern)は、その将来性を秘めている産地である。
木村靖
*筆者の木村靖さんは、オーストラリアの大学でブドウ栽培学とワイン醸造学を学ばれました。
1993年より「ユーカリ」に「木村靖のワイン講座」を執筆していただき、この記事はそれを再掲載しています。
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