ワイン入門(17) 木村靖のワイン講座
オーストラリアの赤ワイン品種 その3
カベルネ・ソーヴィニョン
Cabernet Sauvignon
フランス、ブルゴーニュ地方のピノ・ノアール種から造られる赤ワインがクイーンとすれば、同国南西部のボルドー地方(Bordeaux)を原産とするカベルネ・ソーヴィニョン種から造られる世界最高級の赤ワインはキングといわれる。
両者ワインが異なる点は、ピノ・ノアール種から造られるワインは単一品種が原料に使われ、渋味が少なく、ソフトで気品のある香味を現すのに対し、カベルネ・ソーヴィニョン種を原料にしたワインは、渋味がやや多く、香味にも力強さを持ち、単一品種で造られることがあまりないことである。その補助的な品種メルロー(Merlot)、 カベルネ・フラン(Cabernet Franc) 、マルベック(Malbec)とブレンドすることで、ワインの香味を豊かにして飲みやすくし、これら品種の使用比率の違いで各地ワインの特徴性がでる。
オーストラリアでは、建国の1788年に英国のフィリップ提督によって、シドニーに植樹された葡萄が、カベルネ・ソーヴィニョン種といわれ、その栽培歴は長い。しかし、同品種の本格的な栽培が始まったのは1960年代からであり、多様な気候と土壌に適応する同品種は、現在各地で栽培されるようになり、基本的にボルドーの醸造法に習って造られている。
西オーストラリア州マーガレット・リバー(Margaret River)、南オーストラリア州クナワーラ(Coonawarra)、ヴィクトリア州ではヤラ・ヴァレー(Yarra Valley)、セントラル・ヴィクトリア(Central Victoria)などが、同品種の特産地に挙げられるが、寒冷地のワインはミントのような青っぽいハーブの香りが優先し、逆に温暖地で造られるワインは、甘いベリーやチョコレートなど、果実がよく熟れた香りが現れる。赤品種シラーズとブレンドすることで、同国のもつユニークなワインも造られ、人気のある品種である。
木村靖
*筆者の木村靖さんは、オーストラリアの大学でブドウ栽培学とワイン醸造学を学ばれました。
1993年より「ユーカリ」に「木村靖のワイン講座」を執筆していただき、この記事はそれを再掲載しています。
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