Yukari Shuppan
オーストラリア文化一般情報

2002年~2008年にユーカリのウェブサイトに掲載された記事を項目別に収録。
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インタビュー (18)   マイク エルスモア(Mike Ellsmore)

この欄では、有名、無名、国籍を問わず、ユーカリ編集部で「この人」を、と思った人を紹介していきます。今月のこの人は、ゴミ処理のお仕事に携わっているマイク エルスモアさんのお宅に伺い、私達が出すゴミの行方について、お話ししていただきました。

今日は一主婦として、1週間に一度ゴミのトラックが運んでいく私達の出すゴミが、どこでどう始末されるのか知りたくて伺いました。

ビクトリア州では、1年間で一人当たり千㎏のゴミが出ます。だいたいビクトリア州の人口は400万人ですから、年間400万トンのゴミが出る勘定になります。
千キロのうち、330㎏は家庭からのゴミ、もう300㎏が商業、工業ベースからのゴミ、レストランや事務所などですね。そして300から330kgが建物を壊した時に出てくるゴミです。家庭から出るゴミの25%はリサイクルができるゴミ、紙類、ビン、缶です。さらに25%が庭から出るゴミ、いわゆるグリーンウエストといわれるものです。これはコンポストにしたり再利用ができるものもあり、できないものもいずれは地面に戻るものです。残った50%のゴミが何とかしなくてはならないゴミということで、ここでは、地面の中に埋めています。

穴はわざわざ掘るのですか、ゴミのために。

幸いオーストラリアは地下資源がたくさんあって、石炭、鉄、セメント、レンガを作る粘土などといつもそういう物を掘り出しているので、穴はたくさんあります。ゴミの出る3倍の速さで穴が掘られています。ですから捨て場所に困ることはありません。ただ、場所が悪くて、たとえば水のそば、住宅地が近いなどの理由でゴミが捨てられない穴はありますけれど。

  今は環境問題がうるさいですから、ゴミを捨てるといっても、ただ放り込むのではないのでしょう。

もちろんきちんと周りを固めて、もれないようにします。どうするかと言うと、大きな穴の底も周囲も粘土でおおいます。厚さは1メートル。万が一水がもれたとしても、粘土ですから、ものすごくゆっくりとしみて行きます。粘土の上を厚さ2mmの丈夫なプラスチック(防水)でおおいます。そしてゴミで埋める前に、直径40mmの砕いた石を底に敷き詰めます。ちようど線路の間に敷き詰めてある小石のように。ゴミから出てくる水をろ過するためです。ゴミが詰まったら、最後にプラスチックの蓋をかぶせます。ですからゴミはプラスチックでしっかりと包まれた状態になります。ゴミはだんだんと分解されて、量は減ってきて水が出てきます。この水は塩分やアンモニアを含んでいます。この水もパイプを穴の底に取り付けておいて、ポンプでくみ出して、きれいに処理して下水に流します。炭酸ガスとメタンガスも発生します。メタンガスでタービンを回して発電して売っています。

私達、ゴミを捨てる時、プラスチックの袋に入れて捨ててますね。この袋は分解されるんですか。

大丈夫ですよ、分解されますよ。厚さは50ミクロンで、とても薄く、簡単に破けるでしょう。実際はどうするかと言うと、機械を使って、粉々に砕いて押しつぶして、穴に詰めていきます。鳥などが来て突っつかないように、その日に捨てたゴミの上にはすぐ土をかぶせてしまいます。

穴の大きさはいったいどのくらいあるのですか。

一番大きいもので、こちらの端から向こうの端まで1.3km、深さ20mです。この家(2階建て)は高さ8mですから、2倍半として、だいたい想像できますか。今ゴミを盛んに詰めています。写真に写っているのは、幅100m、奥行き300mの大きさです。白い線に見えるのは粘土層、黒く見えるのは、ろ過の小石を敷き詰めてあるところです。これからここにゴミを詰めていきます。ゴミが詰まると、ゴミの深さは25m、そしてちょうど穴を掘り始める前の地面の高さの少し上になるはずです。

ゴミで埋めて平らになった土地は、何になるのですか。

家は建てれません。少しずつ沈んで行きますから。公園になったり、牧場になったり、ゴルフ場、遊歩道など、リクリエーションの場所になります。市内のアルバートパークも埋め立てでできた所ですよ。

先ほど、ゴミの3倍の速さで穴が掘られているとのお話でしたが、今の埋め立て式のゴミ処理の仕方で、将来不安はないですか。

ないですね。と言うのは、ゴミと穴の関係はお互い影響し合っていますから。穴を掘るのは、コンクリート、ガラス、レンガ、タイルなどと家やビルディングを建てるためでしょう。家が建っていけば、穴もゴミも増える、家が建たなくなれば、家が壊されないので、穴もゴミも減ると言う具合ですからね。ビクトリアは家が建たなくても、10年間はゴミを捨てる穴には困りません。いざとなれば石炭を掘ってるラトローブバレーには大きな穴がたくさんありますから50年は困りませんよ。それでも、こういう仕事をしている私達としては、やはり皆さんに奨励したいのは、第一にゴミを出さないようにすること、第2はリサイクルです。最後の手段として捨てる、ですね。

* 日本はゴミを燃やしてますから、燃えるゴミ、燃えないゴミの分類が大変です。ここで、何でもかんでもいっしょに捨ててるのに慣れていると、里帰りした時めんどくさいなと思います。

そう、日本は埋め立てする場所がないから、大変ですね。ま、言ってみれば、燃やすのも、埋めるのも同じ化学変化のプロセスで、片方は急激に、もう片方はゆっくりと、という違いなんですけどね。燃やすのは埋め立ての4倍のお金がかかります。それに、空気も汚しますしね。

* マイクさんは専門は何ですか。いつ頃からゴミ処理の方を担当されるようになったのですか。

私は機械工学(メカニカル エンジニアリング)出身です。出発はBHP(オーストラリアの優秀企業の鉄鋼会社)で、鉱山の仕事でいつもオーストラリア中を動いていました。会社が穴の再利用として、ゴミの処理を請け負いだしたのは、今から20年前、私は10年前からゴミ部門のマネージャーをしています。

ビクトリア州には、マイクさんの会社のように、鉱山会社でゴミのほうも請け負ってやっているという会社はいくつくらいありますか。

12くらいあります。一般の人は、ゴミの処理はすべて政府がやっていると思われるかもしれませんが、プライベートの会社もやっています。ゴミを家庭から集めるのも会社に頼んでいる市もあります。

マイクさんの下では何人の人が働いていますか。

オフィスが5人、現場で働く人が15人です。それほど多くないですよ。忙しいときは契約している人達に来てもらいますが。この仕事はコミュニティーに直結しているし、新しい技術も導入される部門ですから、私は満足して仕事をしています。

今日はいつも気になっていたゴミの行方がよく分かりました。ありがとうございました。

                     インタビュアー   前田晶子

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