MELBOURNE Street by Street (18) Lonsdale Street ― その 3 ― ケン・オハラ Lonsdale Street を歩いて、今月は Swanston Street を横切る所まで来た。買い物好きな人は、ここで Myer や Melbourne Central の方へ行くことだろう。しかし、ケン・オハラは隣のビルディングの方に関心がある。なぜならこの建物はケン・オハラが興味のある2つのこと、探偵小説と経済破綻に関連があるからである。 Melbourne Central の隣は7階建ての駐車場である。このオーナーはRoman Catholic 系のBlessed Sacrament Fathers の修道士たちである。 修道士たちは駐車場の後ろにある修道院に住んでいて、Lonsdale と Elizabeth Street の角にあるSt Francis' Church を運営している。 この教会は1846年に建てられたビクトリア州で一番古い教会である。日本でいえば、ペリーが黒船で押し寄せて門戸開放を迫った数年前の頃にあたる。 教会は半永久的に頑丈に建てられた。しかし、駐車場の方はそうではない。鉄骨とコンクリートパネルの組みあわせで建てられていて、取り外して他に移し変えることが出来るようになっている。 教会と駐車場の向かい、Myer の隣の25階建てのビルは、現在アパートメントに改造されているところだ。 このビルはMyer のオフィスとして1976年に建てられた。1982年に$25millionで売却された。(これは悪い決断だった、といえる。) Myer はToorak Road の、Monash Freeway から見える所にぶざまにべったりと広がったビルに移転した。(メルボルンの東郊外の地元の人は、このビルをBattlestar Galactica と呼んでいる。) シティの Myer オフィスビルの購入者は、同ビルをNSW のGovernment Insurance Office に$75millionで売却した。買い手の GIO にとって、これも悪い決断だった。ビルは1998年に、またもや$$25million でディベロッパー Lang Walker に売却された。彼はたぶん完成されたアパートメントを$75millionで売却することであろう。 Lonsdale Street はこのような経済的惨状に事欠かない。410 Lonsdale Street の間口がたった9mの小さなビルは1987年に$3.5million で購入され、1997年に$745,000で売却された。 向かいの399 Lonsdale Street には3件の経済的惨状の例がある。 ここは1969年に12階建てのビル建設が開始された。しかし、デベロッパー Connaught Properties はビルが1階まで建ったところで破綻してしまった。 1975年にDominion Properties が同ビルを購入。1977年に3階まで建てたところでこの会社も破綻した。 次のオーナーが10階建てのビルを完成させ、1988年、市場価格のピークで Westpac Property Trust に$3million で売却した。Trust は運が悪かった。Trust はこの物件を1997年にTaylors Colleges にたったの$7million で売却している。 この建物の最初のディベロッパー Connaught はイギリスの G K Chesterton 一族が関係する Chesterton グループがオーナーで あった。 G K Chesterton はFather Brown (ブラウン神父さん)が素人の探偵として活躍する探偵小説の著者として有名である。日本ではあまり知られていないが、イギリスでは「ブラウン神父さん」はシャーロック・ホームズの次に有名な名探偵なのであった。 G K Chesterton は探偵小説の他にも St Francis をはじめとするカトリック教会関係の本をたくさん書いた。彼は1936年に他界した。だから、彼の子孫がメルボルンで St Francis' Church の向かいの不動産に投資をして大損害をしたことは、知る由もない。 ケン・オハラは、Taylors College に、海外から英語を勉強しに来た学生たちがいたら、シェークスピアやディケンズと共に、シャーロックホームズやブラウン神父さんが活躍する探偵小説も、ぜひ読んで欲しいと思っている。
*この記事は2003年の分を再掲載しています。 |