ドリームタイム(20)
最終回
現代のアボリジニー Valeria Nemes 訳 前田晶子 ドリームタイムの最終回ですので、今月は今のオーストラリアの社会の中でアボリジニーがおかれている状況についてお話ししたいと思います。 今一度、先月号のクレンディネンの書いた本の中のお話に戻って見ましょう。砂浜で逃げそびれて、フランス人の調査の対象にされてしまったアボリジニーの女はその後どうなったのでしょう? 実際のところ、私達にはわかりません。しかし、クレンディネンはアボリジニーの視点から続きを想像してみました。 ここで歴史をふり返ってみますと、白人オーストラリアの社会の中でアボリジニーは、殺戮、投獄、失われた世代(無理やりアボリジニーの家族から子供を取り上げてしまって、白人の中で教育しようとした政策)などの悲惨な出来事によって、不当な扱いを受けてきました。しかし、同時に多くの一般市民、政府機関がこの大問題に真剣に取り組んで努力していたことも認めなければなりません。 今ではアボリジニー問題はすべて明らかにされて認識されはしましたが、残念ながら解決には至っていません。問題は、健康、教育、社会的地位、文化喪失など、たくさんあります。 (いつの時代にも、初めて古代文明が近代文明に接した場合、古代文明に不利になってしまうことは悲しいことです。私達にできることは、アボリジニー問題をいつも心に留めておいて、良い解決策が見つかって彼らが自分達の文化を保ちながら21世紀の近代社会に溶け込める日が来ることを願っていることだと思います。) ドリームタイム最後のお話として、生命の始まり(誕生)と終わり(死)についてお話しします。最初のお話は、人の誕生について、そして誕生をとおしてアボリジニーがいかに土地と動物に結びついてきたかお分かり頂けると思います。次に、オーストラリア大陸の北、アーネムランド地方のお葬式についてお話しします。 子供はどこから来るの? レインボースネークは湧き水のそばに場所を作り、小石をたくさん置き、こう言いました。「乾いた所に置かれた石は、私の男の子を宿している。女の子は私といっしょに水の中にいる。」レインボースネークは水のそばの違う場所にも小石を次々と置き、子供の霊、ディンゴの子供の霊、カメの子供の霊、ガンの子供の霊を宿していきました。 アーネムランド地方のお葬式 病気で人が死ぬと、死者の霊が肉体を去って元来た霊の場所に確かに戻れるように長い期間をかけて儀式が行われます。死体は土に埋葬されるか、お棺に入れられて木の台の上に置かれます。3ヶ月経つと家族の所に戻され、きれいに骨だけにされます。骨はペーパーバークという木(オーストラリアの木で薄い紙状の皮で幹がおおわれている。)の皮で包まれて、木の枝別れの所に置かれます。見張り番の男がいて、3ヶ月間守ります。3ヶ月経つと、使者のトーテムを描いたペーパーバークの入れ物に入れられます。そして母親または一番近い親族の女の人が骨の入った入れ物を受け取り、3ヶ月間持ち歩きます。その後骨は、入れ物から出され、絵が描かれた木のほらに収められます。こうして9ヶ月かけて最後には死者の霊は子供として生まれてきたトーテム センターに帰ります。 なぜアボリジニーが先祖の骨をイギリスやオーストラリアの博物館から取り戻そうと、彼らの権利を主張して戦っているかお分かりでしょう。
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