ワイン入門(22) 木村靖のワイン講座
シャンパンとスパークリング (1)
どの国にもお酒と祝い事は、切り離すことのできない共通した食文化と習慣があるようです。日本の伝統的な祝いの行事に、酒樽の鏡割り、お正月にはお屠蘇をいただくように、オーストラリアや欧米諸国では、祝い事には必ずといっていいほどシャンパンやスパークリング・ワインがあげられます。今回は、クリスマスや新年にかけて多く飲まれるこれらのワインについて、少し詳しく書いてみることにします。
シャンパン造りが始まったのは1670年、それまでのソフトで薄い赤色のワインを造っていたフランスのシャンパニュー地方で、修道院の酒蔵の管理を務めていた修道士ドン・ペリニョンが、ワインの中に泡があるのを発見した時、といわれています。この修道士の名前は、今でも最高級シャンパンの銘柄として残っており、フランスの英雄、ナポレオンが愛飲した銘柄としても知られています。
オーストラリアでのシャンパン造りは、それから211年後の1881年、ヴィクトリア州ヤラヴァレーの葡萄を使った原酒から造られた時に始まります。しかし、シャンパニュー地方で伝統的に栽培されるのと同じ葡萄の原料を用いてワインが造られるようになったのは、1970年代になってからです。最近、その品種は世界からも高い評価を受け、フランスのシャンパン・ハウス(製造元)がオーストラリアに進出して、ワインを造りはじめています。
この背景からも、フランス、シャンパニュー地方以外で造られるワインは、”シャンパン”とラベルに表示されることが世界的に禁止され、シャンパンの製法に従って造られた、という意味の”Methode Champenoise" が表示されるようになりました。
木村靖
*筆者の木村靖さんは、オーストラリアの大学でブドウ栽培学とワイン醸造学を学ばれました。
1993年より「ユーカリ」に「木村靖のワイン講座」を執筆していただき、上記は1994年12月号の記事を再掲載しています。
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