Yukari Shuppan
オーストラリア文化一般情報

2002年~2008年にユーカリのウェブサイトに掲載された記事を項目別に収録。
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ワイン入門(28) 木村靖のワイン講座

ワインの保存(1)  

 ワインは樽や瓶の中で熟成するものである。熟成とは、ワインの中に酸素が少量ずつ入り、酸化などの化学変化によってワインの果実味、酸味、渋みなどが柔らかくなり、ワインの香りも変化してアローマが複雑になることである。

 ワインを正しく保存することでワインは適度に熟成し、ワインが持つ本来の香味を最大限に楽しむことができる。誤ったワインの保存は、10年の熟成可能を持つワインの寿命を5年に縮めてしまうこともあり、ワインを美味しく飲むためには、どのようなワインでも正しく保存することが大切である。特に、長期熟成を秘めるワインには細心の取り扱いをしてやりたい。

ワインは古ければ良い、とは限らない。

 瓶熟成の可能性は、葡萄の品種、葡萄栽培の産地、収穫年(葡萄の品質)、醸造法(ワインのスタイル)などで決まる。香味が軽く早飲みスタイルに造られているワインの熟成期間(賞味期間)は、ワインが瓶詰めされてから、早ければ6ヶ月、長くても1,2年である。一方、長期の瓶熟成が可能なワインは、香りが豊かで味も濃いスタイルに造られ、中には数十年熟成するものもある。

 ワインの成分である酸、アルコール、タンニン、ビタミンなどは、酸化を防止するので、これらの成分を多く含むワインは、瓶熟成が当然長くなる。赤ワインにはタンニン(渋味)が多く含まれているので、白ワインよりも熟成期間が長いのが通常である。すでに何年か熟成されたワインなど高価なものを除いては、ワインが高価になるに連れて、瓶熟成の期間も長くなるようである。

 しかし、ワインには熟成のピークがあり、この時期を過ぎるとワインの香味は劣化を始めるので、ワインは古ければよいとは限らない。ワインのガイドブックなどに示してある瓶熟成の期間が8年(ワインを正しく保存した状態で)とすれば、ワインのピークは半分の4年ぐらいとみてもよい。ヴィンテージ・ポートを除いた酒精強化ワインは、ワインが熟成した状態で販売され、栓を開けなければ長期の保存ができるが熟成はしない。

木村靖

*筆者の木村靖さんは、オーストラリアの大学でブドウ栽培学とワイン醸造学を学ばれました。
  1993年より「ユーカリ」に「木村靖のワイン講座」を執筆していただきました。この記事は1995年に掲載したものを再掲載しています。
*この記事の無断転載・借用を禁じます。

 

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