ワイン入門(33) 木村靖のワイン講座
ワインと健康(2)
*良質なコレステロール
ウイスキーやビールなどのアルコール飲料が穀物類から造られるのに対し、ワインは生葡萄を原料にして造られる。このため、ワインには葡萄の果実が持つビタミン、ミネラル、コレルステロールや脂肪を含まない炭水化物(糖分)など、約600種の成分が自然に含まれている。カリフォルニア大学の研究発表によると、これらの成分の中でも、クエーシティン(quercitin) と呼ばれ、葡萄果実がカビ病に対抗するためにもつ成分は、癌の予防に効果があるとしている。カベルネ・ソーヴィニョンは、このクエーシティンが多く含まれているという。
最近の医学研究によると、適量なワインの消費は、血液中にある2種類のコレステロール(HDLと呼ばれる良質なコレステロールとLDLと呼ばれる悪質なコレステロール)の内、良質なコレステロールを増やすことが解った。この効果は、アルコールが血液の循環をよくすることで骨を強くし、血圧が下がるために心臓や脳の障害を減少させるという。妊娠中の「適度のワイン」は胎児に影響を与えない、とも発表されている。しかしワインの適量を超えると、胃、肝臓、すい臓、心臓、神経系統などに障害を与えて、健康維持の逆効果になることも注意している。アルコールの消費は、機械の操作や車の運転の判断を劣らせ、事故につながる率も高くなる。
脂肪分の多い料理に酪農製品を多く食べ、ワインの年間消費量が1人当たり65リットル(世界1位)というフランス人。しかし心臓病にかかる率が世界で最も少ない事実は、ワインに理由がある、とも考えられる。どちらにしても、楽しい雰囲気の中で適量のワインを飲むことは、気分をリラックスさせるという意味で精神的にもよい。が、何でも度が過ぎることは、健康を害する可能性があることには間違いないようである。
木村靖
*筆者の木村靖さんは、オーストラリアの大学でブドウ栽培学とワイン醸造学を学ばれました。
1993年より「ユーカリ」に「木村靖のワイン講座」を執筆していただきました。この記事は1995年に掲載したものを再掲載しています。
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