MELBOURNE Street by Street (37) Spencer Street ― その 1 ― ケン・オハラ Flinders Street が Spencer Street につき当たる所まで歩いてきた。この辺りでメルボルンのビジネスの中心街が終わる。そして、およそ100年をサイクルに繁栄と衰退を繰り返している場面を目のあたりにすることができる。 ちょうどこの角にある Hotham Private Hotel は、まだ衰退の途中である。20世紀の初め、ここはファッショナブルな宿であった。当時、 private hotel は非常に品格のある宿とみなされていたのである。当時のオーストラリアの private hotel ではアルコール類は提供せず、限られた顧客しか泊めなかった。 これは public house と対照的であった。Public house ではアルコール類が売られ、誰でも客として入ることが出来た。100年前の public house は貧乏人のためのものだった。 時代は変わった。今では public house とは言わずに、誰もが pub といい、アルコール類を売る hotel はファッショナブルになっている。 その一方、Hotham Private Hotel のような private hotel のほとんどが、予算を切り詰めたい旅人やバックパッカーなどが泊まる安い宿泊施設となってしまった。 Hotham Private Hotel の隣の 10-22 Spencer Street、 Explorers Inn は観光客向けの近代的なホテルである。これは1888年に private hotel として建てられ、1993年に改造されるまで private hotel として利用されてきた。しかしこの改造はあまり大がかりなものではない。大改造の例を見るために Spencer Street を渡ることにしよう。 100年前、鉄道は町にとって非常に重要な産業であった。それゆえ、鉄道総裁は町で最も重要な人物であった。鉄道総裁は司令部のために、豪勢な建物を Spencer Street に建設することにした。その豪勢な建物の中で、最も豪勢な場所は彼のオフィスであるべきだ、と考え実行した。正面入り口から総裁のオフィスに向かう豪勢なその階段は、現在その部分だけが国宝に指定されているほどである。 しかし、この国の鉄道産業がそうであったように、この建物も100年の間に衰退の一途をたどっていった。1990年において、もはやこの建物は建築物ではなく石の集合と化していた。 それを補修、改造したのはシンガポールの不動産会社であった。現在は Grand Central というホテルとアパートメントに変わっている。かつての総裁のオフィスも2フロアーの4戸のアパートメントに改造された。正面入り口の扉は鍵がかかっているが、ケン・オハラはその前を通る時、ガラス越しに中を覗き、100年前に建てられた豪奢な階段に敬意を払うことにしている。一見に値するので、近くにいくことがあったら、足を伸ばしてみることをお勧めする。 このように昔の建物が補修改造されるとしたら、次はどこだろう。Hotham Private Hotel かもしれないではないか。そして将来は、鉄道を使っての旅が、船旅のように贅沢で格好の良いものとならないとも限らない。もしそうなったら、 Governor Hotham は大いに気をよくするにちがいない。 1854年、メルボルンからポートメルボルンへのオーストラリアで最初の鉄道が開通したとき、彼はビクトリア州の総督であった。 Copyright: Ken O'Hara
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