Yukari Shuppan
オーストラリア文化一般情報

2002年~2008年にユーカリのウェブサイトに掲載された記事を項目別に収録。
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MELBOURNE Street by Street (39)

King Street   ―  その 2  ―    

ケン・オハラ 

先月に引き続き King Street を歩いていくと、メルボルン市内で最大級の二つのビルディングがある。この二つのビルディングは大きさにおいても、経済的な失敗においても、市内で1、2を争うものである。

まず 530 Collins Street をみてみよう。この用地は、いくつかに分かれていたのを、ある保険会社が1982年から1984年にかけて、約$10,000,000で買収したものである。それは1980年代の不動産ブームが始まりかけていた時であった。

保険会社はここに会社のオフィスを新しく建てるつもりだったが、1985年に計画を変更した。用地は ANZ Bank が $37,500,000で購入。1986年に39階建てのビルの建設が開始された。しかしビルの建設が完了したのは1991年であった。その時、すでに不動産ブームは去っていた。

ビルの主な借り手が証券取引所であったにもかかわらず、ビルはテナント不足で空き室ができた。ANZ Bank は1993年にこのビルを$292,000,000で売却した。しかしそれは条件付であった。このビルの15階を ANZ が借りる、ということ(ANZ にとって不要であったにもかかわらず)。他のオフィスのレント代金にうわのせして、向こう6年間に$17,000,000 を支払う、というものであった。

さて次に Bourke Street と King Street の角にある Bourke Place を見てみよう。

オーストラリア最大の保険会社グループAMP は1962年から、この辺りの小さな不動産の買収を始めた。しかしビルディングの建設を始めたのは25年後の1987年であった。これまた最悪のタイミングであった。このビルが完成したのは同じく1991年だった。BHP という大会社がビルの半分を借りたにもかかわらず、AMP は低い投資の還元に長い間苦しめられた。

King Street の向かい側のビルディングは小さいが、経済的な点で面白い過去がある。

Little Bourke Street  との角にある 199 King Street は the Friendly Backpacker lodging houseである。

35年前、ある賢明な投資家がここを $85,000 で購入し、1989年、不動産ブームのピークに $3,060,000 で売却した。購入者側は、その費用の大半を建物を担保にローンを組んで支払うことにしたが、ビルからの収益はローンの支払いにもみたなかった。購入者側の投資はしだいに失われ、支払いもできなくなった。抵当権者は3年後の1992年に、この不動産を $$650,000 で売却した。 1993年、この不動産は$685,000 で売買された。たとえこの金額であっても、新オーナーはこの不動産から収入を得ることはできなかった。ビルは再び抵当権者に戻され、1997年に the Friendly Backpacker Pty Ltd が $700,000 で購入した。

Little Bourke Street の向かい側  205 King Street にも、タイミングの悪さで似たような例がある。このビルは1988年に $2,030,000 で買われ、1999年に $672,000  で売却された。現在ここもバックパッカー・ホテルになっている。

この辺りのこのブロック内に限っても、このような例をたくさんあげることができる。現在、ケン・オハラにとって、このような愚かな投資家たちの例をあげて、批判することはたやすい。しかし、1988年の時点で、もし彼がミリオネヤーだったとしたら、彼もまた同じ間違いをして全てを失っていたかもしれない。

Copyright: Ken O'Hara
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