MELBOURNE Street by Street (40)

King Street   ― 　その ３  ―    

ケン・オハラ 

もしあなたが、１ドル札を５０回倍倍にしていったら、その長さは月に達するほどになるであろう。もしあなたが１ドルを持っていて、それを５０回倍倍にしていったら、それは現在地球にある金額よりも多くなるはずだ。

さて、先月に続いてKing Street を歩いてゆこう。228-230 King Street は何のへんてつもない２階建ての建物である。１９６４年に $22,000 で売買された。１９７９年には$120,000 で。１９８２年には $200,000 で。1989年には $1,100,000 で。しかし1998年にはその約3分の1の $365,000 で売買された。

そして2004年にはその3倍に値上がりして、$970,000 で売られた。

こういう例をみると、やはり不動産投資は富豪への道ではないかもしれない、とケン・オハラは思う。むしろ肉屋の方がいい。King Street のこのあたりは、William Angliss と Victor Smorgon という2人の富豪の名前を思い起こさせる。

William Angliss は1884年にメルボルンで肉屋を開業し、50年後にはビクトリア州でおそらく1番といっていい富豪になっていた。

The Smorgons family も1950年に Carlton で肉屋を開業した。現在メルボルンで１，２を争う富豪の家族といえば、the Pratts と the Smorgons　である。

The Smorgons は262-274 King Street の不動産で大損をした。1974年に建設されたこの17階建てのビルは長い間、借り手がなく1979年に $6,305,000 で売却された。その後この建物は長い間、税務署が借りていたが、おそらくそれが不運を招いたのだろうか。The Smorgons は1986年に、このビルを $13,500,000 で購入する契約をした。そして1989年には $22,000,000 でほとんど売れることになっていた。しかしその前に不動産市場の値崩れが始まったので、支払いを止め、ビルは売り手の元に戻させた。そのビルは1993年に $2,450,000 で売却された。

このビルは2000年にふたたび $9,250,000　で売買され、アパートメントに改造された。

Smorgon family company　は、角を曲がったところにある　628 Bourke Street の QBE House を開発した。ビルは1989年、丁度1980年代の不動産ブームが終わる頃に完成した。このビルの建設は費用が高くつきすぎた。土地代が$10,750,000。建設費が $55,000,000 かかった。The Smorgons の損失は莫大な金額となった。抵当権者が建物を引き取り、1996年にシンガポールの投資家が$35,000,000 で購入した。

このビルは2001年に $59,450,000 で再び売買された。The Smorgons はもう少し待つべきだったのだろう。

King Street をさらに歩いていき左に曲がると La Trobe Street に出る。ここには Sir William　 Angliss Centre と William Angliss Institute がある。この institute は William Angliss が food services trainig school　設立のために大金をビクトリア州政府に寄付し、その資金で建てられた。

William  Angliss は1957年に他界した。 The  Angliss company はイギリスの the Vestey family  一族がオーナーとなったが、1980年までメルボルンには　Angliss の冷蔵倉庫と肉屋があった。（ 50 Bourke Street　がそれだったが、現在はアパートメントブロックになっている。）しかし Angliss family の一人は　400 Collins Street のオフィスビルのオーナーである。

The Angliss という名前はオーストラリア人の記憶からは薄れつつあるが、 Smorgons の方は産業界ではまだ健在である。 Smorgons Steel は家族経営の会社としてはオーストラリアでは最大級である。しかし、現在の Smorgons family は、その資産を分散し、それぞれが独自の方向に行こうとしている。

Victor Smorgon は近年 Carlton　に戻り、彼が最初に開店した肉屋を買い戻した。

ケン・オハラはソーセージ店でも始めてみようか、と考えている。

Ｃｏｐyright: Ken O'Hara
＊この記事及び写真の無断転載、借用を禁じます。