MELBOURNE Street by Street (49) Queen Street ― その 4 ― ケン・オハラ Queen Street を歩いてきて、Little Lonsdale Street を横切ると、メルボルン市内でも非常に興味深い路地の一つ、Guildford Lane がある。このあたりは19世紀の雰囲気がまだ残っている市内でも数少ない一画である。 300 Queen Street で右に曲がってみよう。これは、150年前に Lord Mayor of Melbourne のために建てられたマンション(邸宅)で、市内で一番古い家である。 もしも建物を人の一生に例えるとしたら、この建物は、活気のあった興味深い前半生の後、現在は静かではあるが意義のある後半生を過ごしている、といえるであろう。 The Lord Mayor は、後にこの邸宅を政府に譲り渡した。それ以後、ここはオフィス、ジャム工場、ボーディングハウス、ナーシングホーム(老人ホーム)と移り変わり、現在またオフィスとして使われている。 Guildford Lane に入ってみると、モダンに改造されたこの建物の一部が道沿いにある。300 Queen Street が the Lord Mayor のレジデンスとして使われていた当時、Guildford Lane は工場と倉庫がある路地でもあった。 では Guildford Lane の東よりを歩いてみよう。左に1階または2階建ての工場やワークショップが並んでいる。その内のいくつかはオートバイの店になっている。これらの建物はオートバイの出現するずっと前に、ワークショップとして建てられた。にもかかわらず、これらの店はオートバイの雰囲気にぴったりと合っている。ここの場合、建物と使用目的の相性がいいのだろう。他の建物は、そうしっくりとはいっていない。 これらは工場や倉庫、ワークショップとして建てられたが、現在、多くはアートスタジオになっていて、オーナーが2階に住んでいる。オーナーたちはここが気に入っているらしく、建物の手入れにも心がこもっている様にみえる。建物としても不満はないであろう。 Guildford Lane の反対側は変化が激しい。倉庫だったところは、そのほとんどが改築されてレジデンスになっている。 以前は工場だった 22,23 Guildford Lane は取り壊され、現在は4軒の住宅になっている。2軒は Guildford Lane に面し、他はその後ろのもっと小さい路地に面している。 メルボルンの市中には1300戸以上のアパートメントがあるが、地上に建っている家は約15軒である。そのうちの約半数は Guildford Lane にある。 ここに新築された家は周りを古い工場に囲まれているが、同じ頃に一緒に建てられたので孤立しているようには見えないし、違和感もない。このように工場と住宅が隣り合わせに建っている、といことは100年から150年前のメルボルンではよくあることであった。 東のはずれの Sutherland Street まで来ると、古い昔に戻ったようだ。 2-6 Guildford Lane と 25-29 Sutherland Street のオーナーは40年以上変わっていない。その前の100年もほぼ同じことだったのだろう。 右(南)の角にある不動産は the Duckett family が90年以上オーナーだ。The Duckett family は初期のメルボルンの自動車業界のプロモーターであった。ここは25年前までは自動車のワークショップとして使われていた。現在は壁が残っているだけである。 反対側の 18-24 Sutherland Street。この2階建てのビルは the Royal Antediluvian Order of Buffaloes がオーナーであり使用者でもあるが、この Masonic group(石工の熟練工組合)が名乗るほど古くはない。(注: antediluvian とはノアの箱舟の洪水の前、という意味) しかし、Buffaloes は55年以上続いているオーナーで、このあたりの古めかしい雰囲気に貢献していることは間違いない。 Copyright: Ken O'Hara |