MELBOURNE Street by Street (５4)

Elizabeth Street   ― 　その 4  ―    

ケン・オハラ 

メルボルンの CBD (Central Business District) のある一画では、常にビルの改造、改築が行われている。しかし、それは地上レベルのことで、そこから上の階はまどろんでいるように穏やかで変化が無い。

Elizabeth Street の南側を歩いてきて Little Collins Street を横切るあたりに、その例をたくさんみることができる。この辺りは小売店の多い繁華街である。新しい店舗が数年に一度、いやもっと頻繁に、入れ替り立ち替り開店されている。その度に地上レベルの店舗は新装され、様変わりする。しかし上階は最初に建てられた時とほとんど変わっていない。

Elizabeth Street と Little Collins Street の南東の角にある the City of Melbourne　ビルディングは、１８８８年に建設された。その１階にある店舗は、ほとんど２、３年おきに新装されているが、目をあげて上を見ると、１００年前と同じ姿の古いビルディングがある。

反対側の南西の角にあるビルディングはもっと新しく、１９６８年に建てられた。地上１階の店舗はしばしば改装されるが、その上の階は建てられた時と全く変わりが無い。

ここで西側の歩道を歩いて地上の店舗を見ている限りでは、世界のどこにでもある新しいショッピング街と変わりが無い。しかし反対側のビルディングを見上げてみよう。７５年、１２５年経ったビルディングの姿がある。古色然とした Block Arcade があり、１９３５年に建てられた１１階の蜂の巣型クラシックビルディング。この蜂の巣ビルディングのロビーは、まるでタイムカプセルのようで、一見の価値がある。隣の３階建てのビルはとりたてていうほどの特徴はないが、我々の祖父の時代からそこにある。そこにある店舗は Alexanders clothing business のために建てられたもので、正面を見上げると、"1885" という年数が記されている。Alexanders は１９７０年代までこの店舗を使ってビジネスをしていた。その隣は丸い出窓のある３階建てのビルで昔々の建築家の夢の後、という趣だ。

そしてElizabeth Street と Collins Street の角に来ると、ここはモダン建築の愚行の展示場のような場所である。建築家たちはオリジナルのビルディングがどのような佇まいか、古いか新しいか、全くおかまいなしにデザインをして改装、増築している。

北東の角にあるのは１９０３年に建てられた Davison Building だ。２０００年にアパートメントに改造されたが正面入り口はオリジナルが巧みに保存されている。ところが屋上に更に２階が増築された。これはまるで屋根に座礁したキャラバンが乗っているように見える。

南東の角には１０階建ての古風なビルがある。南側の２０年前までは小路だったところに増築がなされたが、あまりにもオリジナルとは異質なために、他のビルからの増築のように見える。（まあ、それで良かったのかも知れないが。）

そして南西の角、１９７３年に完成した２９階建ての the IOOF Centre。 このビルの特徴は凹型の格好の良い正面入り口にあった。ところがオーナーは１９８６年に路の際まで１階を増築してしまった。その格好は四角いＵＦＯがその角に不時着して、そこにはまり込んでしまったかの様に見える。

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