Yukari Shuppan
オーストラリア文化一般情報

2002年~2008年にユーカリのウェブサイトに掲載された記事を項目別に収録。
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ドリームタイム(18)


白人と出会ったアボリジニー

Valeria Nemes     訳 前田晶子

クック船長がオーストラリアを訪れてから、探検家、入植者、役人、兵士、神父、測量師などがやって来ては、いろいろなアボリジニーの部族と接触していきました。そして、シドニーの政府に報告をしましたが、報告者の教養や人柄によって、表現が異なりました。ある人は、おとなしくて協力的と言い、別の人は、牛や物を盗むと言い、又野蛮で恐ろしい戦士と言う人もいました。

それでも、ほとんどの白人達は見下した慇懃な態度をアボリジニーに対してとったといいます。白人の視点からアボリジニーを見ていたからです。西欧社会は、物の所有に重きをおきましたが、アボリジニーは物質面にはほとんど関心がありませんでした。それに加えて、西欧社会の基準から見ると、アボリジニーの態度は愚かに見えたのでした。しかし、アボリジニーは西欧社会の風習など知る由もなく、当然のことでした。心ある白人達は、アボリジニーの扱われ方や報告のされ方に憤慨していました。

報告の一部を紹介します。
牧場主がアボリジニーの部族から無理やり若い男女を連れて行き、労働力として使いました。食べ物と服を与え、彼らは幸せだと言ったそうです。しかし、夜にはアボリジニー達を縛っておかなくてはなりませんでした。そうしないと逃げ出して自分達の部族へ帰ってしまうからです。又政府はアボリジニーを西欧の法律で裁かないようにしたといいます。彼らは西欧の法律を理解しませんでしたし、閉じ込められるとストレスで死んでしまったからでした。もちろんアボリジニーには白人の知らない独自の厳しい掟がありました。

次のお話は、男の儀式と掟によって、どのように女が処刑されたかを伝えています。
女2人が食料探しに出かけました。突然2人は儀式で行われる歌とスティックの音を聞いてしまいました。2人はすぐ聞き耳を立てるのを止めて、おびえ始めました。1人が言いました。「早く遠くへ行こう。この歌を聞いたらいけない。私達は許されていないのだから。」2人は手で耳をふさいで逃げ出しました。それでも歌はまだ聞こえてきました。
部族の男に出会い、2人は歌を聞いてしまったことを話しました。何を聞いたか聞かれたので、2人は歌い出しました。すると男はびっくりして叫び出し、2人の口を手で押さえました。男が「どこで聞いたか教えろ」と言ったので、2人はその場所まで男を連れて戻りました。「何か見たか」と聞かれたので2人は「何も」と答えました。
男は2人を連れて、皆の所へもどりました。そして長老達を集め、女が歌を聞いてしまったことを話しました。彼は、「この2人は皆に歌を伝えてしまうだろう。それは良くないことだ。だから殺さなければならない。」と言いました。男は2人を殺しました。

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