Yukari Shuppan
オーストラリア文化一般情報

2002年~2008年にユーカリのウェブサイトに掲載された記事を項目別に収録。
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日豪教育事情 
(6)    

オーストラリアから                       

関口 理恵

  先回は学校のシステムという教師側の話だったので、今回は生徒の話。洋の東西を問わず、今や携帯電話の普及には目覚しいものがあり、一人一台の勢いで広がっているのでは? 特に日本では、写真やメール、インターネットなどと、機能も桁違いに進んでいるとか。ここオーストラリアもご多分に漏れず、持っている人が増え、生徒達の携帯電話け・い・た・い率も年々増えている。

 先日のこと。休んでいる先生の補欠で自習授業の監督に行った。チャイムが鳴ってしばらくすると、教室の中に「タラリラリン」という携帯電話のメール受信音かな?と思われる電子音が響き渡った。確か2、3年前は、学校に携帯電話を持って来ちゃだめということで、そんな事があったら即刻取り上げなければならなかったのだが、昨今は親からの要求もあり、持って来てもいいけど学校内では電源をオフにする事から、休み時間には使ってもいいが云々と、どんどん校則は変えられており、はて一番新しいのはいったい何だっけ?と思い出せない。知らないと言うのもまずいと思い、ちょっと考え、おもむろに「携帯電話のルールはみんなもちろん分かってるよねえ。私は取り上げて教頭に渡すなんて事はあまりしたくないから、今の音を発したと思い当たるものは、即刻必要な処置をすること。」と言った。生徒たちは、「いやいやあれは、腕時計のアラームだ。」とか、「先生、そんな音じゃなくって、私の口笛です。」とか、口々に友達をかばい言い訳をしてくる。美しきかな友情?

 オーストラリアの生徒たちは、ワイルドで、行儀も悪く大変なんじゃないかと思われがち(確かにそういう所もある。)だが、彼らは結構まともだし、なかなか大人でもある、と私は思っている。本音と建前をうまく使い分ける。「宿題やってないね。」「おしゃべりはだめだよ。」「スカート短かすぎ!」と注意すれば、素直に謝る。(残念ながら継続性は無くて、すぐに同じ事を繰り返したりはする。)ただし、注意しなければどんどん増長する。生徒側もこの先生はどこまでが許容範囲か計っているようだ。そういう訳で、私は日本で教師をしていた時より、ずっとずっと威張っている。授業中にはトイレも行かせなかったりする。(人権蹂躙とか言わないで下さい。多くの場合そんなに切羽詰まってないのです。勿論様子を見ていて、本当に必要であれば行かせます。)なぜなら、さもなくば、トイレには行くは、保健室には行くは、ロッカーにティッシュを取りに行くはで、教室の中はたちまち半分くらいになってしまうからだ。(ちょっと大袈裟カナ)これでは、どこが大人なの?と思われるかも知れないが、注意された時の態度がなかなか大人だと思う。「ごめんなさい。」とちゃんと言える。(これがなぜか本当の大人になると、「私のせいじゃない。」ということになってしまうのは不思議だが)これは教師にとってはとてもありがたい事で、彼ら自身も悪いと分かってる事を注意して、開き直られたり、文句を言われたのではたまらない。そのルールが本当に人道的に必要なのかどうかという論議は別として、こちらは注意する役であり、彼らはその学校に通う以上、そのルールに従う立場にあるのだから致し方ない。駐車違反した人と、インスペクター(日本の方は馴染みが無いですね。交通巡査とでも言う事にしておきましょう。)の関係だ。

お陰さまで、日本に居た時より、ずっと教科指導に集中できる幸せな日々を送らせていただいています。そうは言っても、時にはちょっと手に余るツワモノもいて、そういう時は先回お話した、ハイと手を挙げて学年主任様になった、やる気満々の方にお任せすればいい。それでもだめなら、専門の先生、教頭、校長とシステムはバッチリだ。

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