Yukari Shuppan
オーストラリア文化一般情報

2002年~2008年にユーカリのウェブサイトに掲載された記事を項目別に収録。
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14  オーストラリアの映画

Sunday too far away                            スピアーズ洋子

アメリカ、ヨーロッパ、アジアに比べると、オーストラリアの映画産業は影が薄いようですが、映画そのものの歴史は意外に長く、最初の映画が創られたのは1896年のことでした。世界で最初に映画が創られたのは1895年のパリ。それに続いて1年後に、メルボルンカップを含む短編記録映画がシドニーで公開されています。4年後の1900年には劇映画が制作、公開されました。第一次世界大戦から第二次世界大戦までの間、オーストラリアの映画産業は世界に先駆けて、沢山の映画が創られています。第二次世界大戦後は、ハリウッド、ヨーロッパの映画の勢いに押されて、だんだん影が薄くなってしまいました。それでも幾つかの「名作」といわれる映画が創られ、その題名は社会的なものとなり、新聞、雑誌、ラジオやテレビなどで、今でも比喩的に使われる映画があります。
 Sunday too far away はその一つです。
 映画の内容は1950年代のオーストラリア。シェアラー(羊の毛を刈り取る職人)たちの苦難に満ちたアウトバックの牧場生活が描かれています。撮影も大部分が1960年代に実際に使われていた、牧場の羊毛刈り取りの小屋を使って撮ったとのこと。
 タイトルの Sunday too far away は、羊の毛を刈る重労働に明け暮れ、その代償に大酒を飲む夫たちへの、妻の苦情を歌った、古くから伝わっている歌の歌詞から引用されています。
 歌の内容の一部を翻訳すると、「あなたは週日働いて、金曜日にはくたくたになって帰ってくる。疲れてそのまま寝てしまう。土曜日は大酒飲んで、酔っ払って寝てしまう。愛し合えるのは日曜日だけ。その日曜日は、まだまだずっと先のこと。」
というようになります。
 このフレーズは、歌に歌われている妻たちの心情の場合と、牧場でのシェアラーたちの厳しい環境や重労働をさす場合もあるようです。
 日本人からみると現在のオーストラリア人の生活は、のんびりしていてゆとりがあるように見えますが、以前には厳しい時代がありました。農業国のオーストラリアで、かつてのオージーたちの姿を知る良い手がかりとなる映画といえるでしょう。


Picnic at Hanging Rock  

1975年制作、Peter Weir 監督のこの映画は、Joan Lindsay が書いた小説を映画化したもので、時代は19世紀のオーストラリア植民時代。舞台はメルボルンから北東に1時間半ばかりドライブしたところにある Hanging Rock.。
 Hanging Rock と呼ばれているのは、小高い丘の上にある高さ120メートルほどの火山岩の集積が、なんとなく異様な雰囲気をかもしだしている所です。
 映画はオーストラリア植民時代の女学校の寄宿舎の生徒たちが、ここに集団でピクニックに来て、そのうちの3人が行方不明になってしまう話で、実際に起こったことを元にして書かれた、ということです。
 オーストラリアの代表的な映画のひとつとして、テレビなどで繰り返し放映されているので観る機会は時々あります。映画を通して昔のオーストラリアの一部を知ることができるでしょう。
 今では Picnic at Hanging Rock とめいうったイベントとして、収穫祭、地域の名産のマーケットが開かれています。マウント・マセドンのそばで、メルボルンから余り遠くないので、機会があったら一度行ってみることをお勧めします。


The man from Snowy River

 The man from Snowy River はオーストラリアの国民的な作家であり詩人でもある  Banjo Paterson (本名Andrew Barton Paterson 1864-1941)の代表作の一つ。多くの才能に恵まれた Banjo Paterson は、弁護士をするかたわら小説や詩を書き、ジャーナリスト的な才能もあって、オーストラリア国内に限らず、中国や、第一次世界大戦中のヨーロッパで特派員の仕事もしています。世界的にも有名なバラード Waltzing Matilda も彼が作詞したものです。
 作品の底に流れている、オーストラリア魂ともいえる大自然と共に、何にも束縛されずに自由に生きることへの憧れ、男のロマンが、多くの共感を呼びました。
 いうまでもなくオーストラリアの大自然は、彼の作品の大切な舞台となっています。The man from Snowy River もその一つ。
 The man from Snowy River はビクトリア州の東北部、ニューサウスウエールズ州との州境にある Snowy Mountains と呼ばれる山岳地帯が舞台となっています。そこで育った青年が父親を失い、様々な葛藤を経て一人前の男に成長していく物語ですが、ここでもオーストラリアの自然が大きな役割を果たしています。
 映画化されたのは1982年。カーク・ダグラスが主人公の叔父と父親の友人の二役で出演しています。映画は翌年1983年のゴールデン・グローブ賞でベスト外国作品賞を得ています。


Crocodile Dundee 

これまで紹介した3つのオーストラリアの映画は時代背景がかなり昔のものでしたが、Crocodile Dundee は1986年制作、時代背景も当時のものです。
 この映画は、ニューヨークの女性ジャーナリストが、オーストラリアのブッシュでサファリビジネスをしていてワニに襲われ危うく命をとりとめた、というオーストラリア人の男を、はるばるインタビューしに来豪。サファリに同行したジャーナリストは、クロコダイル・ダンディと呼ばれるこの男に興味をもち、ニューヨークに招待。そこから文明の最先端を行くニューヨークとオーストラリアのブッシュを舞台にして、さまざまな出来事が起きる、という設定のアクション、アドベンチャーものにコメディタッチが加えられています。
 アメリカ映画のアクションものと違って、はでな撃ち合いやカーチェースがなく、主人公のクロコダイル・ダンディは、おっとりとテンポが一歩ずれていてユーモアがあり、ユニークです。これまでのアクション映画のヒーローとは異なる新鮮さ、随所に見られる発想、展開の意外性などが受けたようです。
 映画は世界的にヒットし、シナリオ書きの段階から制作に加わり、主人公のクロコダイル・ダンディーを演じたポール・ホーガンは、オーストラリアの男優として、国外でも一躍有名になりました。
 映画のヒーロー、クロコダイル・ダンディと現代オーストラリアの男性を単純に関連付けることはできませんが、主人公はオーストラリア的な性格の片鱗を表していることは確かです。

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