Yukari Shuppan
オーストラリア文化一般情報

2002年~2008年にユーカリのウェブサイトに掲載された記事を項目別に収録。
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ワイン入門(19) 木村靖のワイン講座

葡萄栽培

 
 葡萄の品種は世界に千種類以上あるといわれるが、その中でもワイン醸造に用いられる葡萄は、専門用語でヴィティス・ヴィニフェラ (vitis vinifera) という種に属する品種である。

 オーストラリアで造られているワインのほとんどは、この種の葡萄から造られ、フランスやドイツなどの銘醸地で千年以上も栽培されている品種と同種類のものである。これら醸造用品種でも優等のクラスに挙げられるのは、白ではシャルドネ、リースリング、セミヨン、ソーヴィニョン・ブラン、シェニン・ブラン、赤ではピノ・ノアール、カルベネ・ソーヴィニヨン、シラーズ、メルローなどがある。それぞれの品種に適する気候と土壌に育ち、血統の良いクローンの葡萄から造られるワインは、高級クラスの仲間入りをする。

 オーストラリアに葡萄が伝来したが、建国の年1788年。17世紀初頭、すでにフランスから南アフリカに渡っていた葡萄が運ばれ、その後はヨーロッパ諸国から直接に輸入されるようになった。葡萄は苗木で簡単に増殖でき、水にしっかり漬けた苗木を湿った布などで包み、冷蔵庫で保存すると1年以上休眠する。

 オーストラリアなど南半球にある主要な葡萄栽培地では、北半球とは逆に、春入りにあたる9月から10月にかけて葡萄の発芽をむかえ、1年に1度の葡萄発育シーズンが始まる。

 発芽の前線は、北方の温暖地帯から南方や標高の高い寒冷地に移動していく。展葉期を過ぎると、発芽から約2ヵ月後に甘い香りのする白い花を咲かせ、実が結ばれる。青い実は夏入りの12月頃からその大きさを増し、色づき始めて熟成期に入る。果実は熟成が進むと甘味を増し、酸味が減っていく。そして、醸造に適した葡萄の成分の量(糖度、酸度、ペーハー数値)が計られ、果実の味が最高になった時を見計らい、摘み取りが行われる。

 葡萄の収穫 (vintage) は、温暖な北部産地のハンター・ヴァレー地区(New South Wales)などでは1月下旬頃から始まり、ヤラ・ヴァレー地区 (Victoria) など、南部や標高の高い寒冷地では、3月下旬から4月に始まる。北半球では、収穫が9月から11月頃に行われるので、同じ年のワインでも南半球のワインは半年早く仕上がることになる。

 収穫期は、栽培品種、気候、土壌、畑の葡萄面積、ワインのタイプなどによって異なるが、通常の畑では1~2ヶ月間続く。収穫が終わり秋が深くなる頃、葡萄樹は葉を落とし、約3ヶ月の休眠期に入る。この間、翌年に品質の安定した葡萄を収穫するための剪定作業が行われる。


木村靖

*筆者の木村靖さんは、オーストラリアの大学でブドウ栽培学とワイン醸造学を学ばれました。
  1993年より「ユーカリ」に「木村靖のワイン講座」を執筆していただき、この記事はそれを再掲載しています。
*この記事の無断転載・借用を禁じます。

 

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