Yukari Shuppan
オーストラリア文化一般情報

2002年~2008年にユーカリのウェブサイトに掲載された記事を項目別に収録。
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ワイン入門20 木村靖のワイン講座

オーストラリアの白ワインの醸造

 
 オーストラリアのワインは、フランス、ドイツなどのワイン産地で伝統的に栽培されている同じ品種の葡萄を原料に用い、ヨーロッパの各ワイン産地の醸造法を基本に造られている。

 この伝統的なヨーロッパのワイン醸造法に併用して、1960年代から始まった近代的な醸造技術の導入により、最近では、ワインの風味に葡萄本来の味が豊かに現れているのが、オーストラリアのワインの特徴といわれるようになった。

 ワインには、それぞれの葡萄品種に適した醸造方があり、白ワインの中にも甘口から辛口、オーク樽で熟成するものとしないものなど、いろいろなタイプに分けられる。これら白ワインの醸造法に共通することは、摘み採った葡萄を傷ませない状態で破砕し、低温発酵で新鮮味のあるワインに仕上げることである。

 オーストラリアの葡萄の収穫は、通常1月下旬(温暖地方)から3月中旬(寒冷地方)に始まり、一般に白葡萄品種は赤葡萄品種よりも早く熟成する。果実が熟成してくると、ワイン造りに適した果実の成分(糖度、酸度、ペーハー数値など)を測定し、果実の味が最も良くなった時を見計らい、収穫日を決める。

1 収穫 (vintage)
手作業、あるいは機械で摘み取られた葡萄の果実は、ワイナリーに運ばれる。

2 破砕 (crushing)
果実の潰しと同時に果梗は取り除かれ、果汁、皮、種はポンプでプレス機に送られる。高級ワインやスパークリング・ワイン用の葡萄は、特上の果汁をとるために、果実を破砕しないで直接圧搾することもある。

3 圧搾 (pressing)
この工程では、プレス機で柔らかく搾られた果汁(上質ワイン用)と、堅く搾られた果汁(並みワイン用)に分けることがある。圧搾が終わると、果皮と種は除かれる。

4 発酵 (fermentation)
ステンレススティールのタンクで発酵する場合、果汁を澄ませてから澱引きして酵母を加える。オーク樽使用の場合、澱引きをせずに酵母をくわえる。発酵温度は15度C以下の低音。発酵期間は約2週間。酵母が果汁の糖分を完全に消化すると辛口ワイン、発酵を人工的に止めて果汁の糖度を残すと甘口ワインに仕上がる。

5 熟成 (maturation)
発酵終了後、ワインを清澄させ、リースリングのように樽熟成をしないワインは、ステンレススティールのタンクで4~5ヶ月の熟成をする。シャルドネのように樽で熟成するワインは、最高10ヶ月くらいの熟成をする。

6 濾過 (filtration)
熟成の終わったワインは、フィルターを通して濁りを取り、殺菌をする。

7 瓶詰め (bottling)
ボトルに詰められたワインは、コルク、キャップ、ラベルが貼られ、ワインを静かに寝かせた後、市場に出荷される。


木村靖

*筆者の木村靖さんは、オーストラリアの大学でブドウ栽培学とワイン醸造学を学ばれました。
  1993年より「ユーカリ」に「木村靖のワイン講座」を執筆していただき、この記事はそれを再掲載しています。
*この記事の無断転載・借用を禁じます。

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