Yukari Shuppan
オーストラリア文化一般情報

2002年~2008年にユーカリのウェブサイトに掲載された記事を項目別に収録。
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Yukari - April - Street

MELBOURNE Street by Street (20)

Lonsdale Street   ―  その 5  ―    

ケン・オハラ 

Lonsdale Street を歩いて来て、今回でシティのウエストエンドまで来た。ここに来ると、かつては市を支えていた産業の活力が、時代と共に移り変わっていった様子がわかる。

現在ここにある主な建物は、Lonsdale Street と  Spencer Street の角にあるメルボルンの旧発電所、The Age のオフィス、そしてSpencer Street 駅である。これらの建物の大改造が、かつて行われたのを、ケン・オハラは見ているが、現在また大改造が行われつつある。

発電所の一部は19世紀に建てられたものであるが、50年前まで様々な改造築がなされていた。煙突は1950年に増築されたが、今では歴史的な価値がでてきた。この発電所は1982年まで実際に使われていたが、2001年にプライベートディベロッパーに売却された。

The Age の建物は発電所に比べるとずっと最近のものである。1968年に印刷部門も一緒に建設された。しかし、2003年に印刷部門はTullamarine に移転した。飛行場へ向かってドライブしていて、この印刷所の横を通る時、ケン・オハラはなぜか竜安寺を思い浮かべてしまうのだが、一度チラッと目をやってもらえば、理由がわかっていだだけるはずだ。

Spencer Street のThe Age ビルディングの屋上からは、West Gate Bridge がよく見える。

1970年代の The Age とメルボルンの他の新聞の一大ニュースは、建設中の West Gate Bridge が、くずれ落ちて35名が命を落としたことであった。 

メルボルンの他の大きな新聞社 Herald-Sun の印刷部門は、10年前にシティから West Gate Bridge の隣の Westgate Park に移転した。

発電所もシティから出て、現在メルボルンの主な電力は、メルボルンの東150キロにある Latrobe Valley から供給されている。

しかし、Spencer Street Station は移転はしない。

最初の駅は1859年に建てられた。現在の駅は1962年に増改築されたものである。ケン・オハラは駅のホールにある大きな壁画が気に入っている。通俗的な政府の意図と鉄道の歴史の興味深い見本のように思えるからである。

オーストラリアの鉄道の歴史は、オーストラリア建国よりもずっと古く、建国以前にそれぞれの州が、それぞれのゲージで鉄道を建設した。例えば、ビクトリア州はゲージが1600mm。NSW州は日本と同じ国際基準の1435mm。クイーンズランド州は狭い1067mm、という具合であった。

それゆえ1962年までメルボルンからシドニーへ夜行列車で行く場合、真夜中に州境の駅 Albury で、シドニー行きの列車に乗り換えなければならなかった。反対のシドニーからメルボルンは最悪であった。Albury 駅で朝の4時に起きて、荷物を抱え列車を乗り換えなければならなかった。

1962年にNSW州の標準ゲージの路線がAlbury からメルボルンの Spencer Street 駅まで延長された。

当時は飛行機はまだプロペラ機で、旅行にはもっぱら列車が使われていた。

ケン・オハラは1962年、シドニーとメルボルン 間を走るSouthern Aurora と呼ばれた夜行列車の旅を楽しんだものである。

その列車にはバーの付いた食堂車があり、ウエイターが運ぶ3コースのディナーが取れた。ベットとトイレ、シャワー付きのシングルキャビンがあり、朝には新聞を届けてくれた。

現在では、ビジネス旅行はほとんどが飛行機になった。モダンな汽車にはレストランもバーもシングルキャビンもない。スピードは少々速くなったが、それまではメルボルンを夕方発って、朝9時にシドニーに着いていたのが、6時に着くようになって、かえって不便になっただけである。ケン・オハラもビジネス旅行はもっぱら飛行機である。

ビクトリア州政府は、Spencer Street の増改築予算に$300million を当てると発表した。オフィスビルとDocklands へのコネクションも含めてのものである。

ホールの壁画は保存される。

ケン・オハラは新オーナーが発電所の煙突も保存してくれるように願っている。それにシドニーとメルボルン間の夜行列車がいつの日か、復活するようにも願っている。それとWestgate Park まで足を延ばしてみることをお勧めしたい。シティのそばだし、そこで無料の渡し舟に乗って、橋の影に沿って川を渡るのもいいものである。 

*この記事は2003年9月号に掲載したものをそのまま再掲載しています。
copyright: Ken O'Hara
*この記事及び写真の無断転載、借用を禁じます。

     

     

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