Yukari Shuppan
オーストラリア文化一般情報

2002年~2008年にユーカリのウェブサイトに掲載された記事を項目別に収録。
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MELBOURNE Street by Street (28)

Flinders Street   ―  その 3  ―    

ケン・オハラ 

ケン・オハラはビールを崇めているわけではないが、教会へ行くよりはずっと頻繁にホテル(パブ)に足を運んでいる。このコラムでも同様である。では、次の Russell Street と Swanston Street の間のブロックへ移るとしよう。

Wellington Hotel を通り過ぎると、Forum Theatre がある。この劇場は、75年前、当時オーストラリア最大の3400席を誇るハリウッドスタイルで、ライバルの Collins Street にある Regent Theatre に先駆けて3週間前にオープンした。その後分割されて小さくなった劇場を、20年前にキリスト教の小さな一派が購入し、集会場に改造した。しかし、劇場はまた売却され、10年前に再びエンターテイメントに使われるようになった。(ビールも飲めるようになった。)

次の建物は Forum Theatre と同じ頃に建てられた古い Masonic Club。これは50年以上建設者がオーナーであった。

The Masons 又は Freemasons と呼ばれる団体は、当時のオーストラリアでは(イギリス、アメリカでも同様)、社会に非常に強い影響力があった。オーストラリアの町には、いまだに60年から80年前に建てられた、Masonic Hall や Masonic Temple が見られる。

Masons は約500年前のイギリスで、熟練石工士によって設立された団体で、神を信じる人たちではあるが、宗教と直接関係は無い。Masons はコミュニティへの奉仕やチャリティに熱心な団体で、Masonic 病院をたくさん建てた。多くのキリスト教徒は Masons をライバルとみなしていたようだ。

現在のオーストラリアでは、Masons の数は著しく減少し、 Masonic Club は閉鎖された。 Flinders Street の Masonic Club も10年前にアパートメントに改造された。

Flinders Street に沿って次にあるのは Flinders Gate 、10年前に建設されたオフィスビルと駐車場である。

かつてここにはBall and Welch デパートメントストアーがあった。正面をそのまま残して改築された。この建物は不動産投資におけるリスクと利益についての、いい例を表している。

この不動産は Hoyts cinema group によって開発改築された。1993年に完成し、$15mで売却されたが、Hoyts にとっては何ミリオンもの損失であった。この時の購入者は悧巧であった。2年後に$30.5mで売却した。しかしこの時の購入者(Forum のオーナー David Marriner) はもっと悧巧であった。かれはこの建物を1998年に$55.37mで売却している。

次はもっと古い建物である。110年ほど前、大きな会社はそのビルを大聖堂に似せて建てたがった。196 Flinders Street がその一つで、1891年にメルボルンのガス会社のために建設された。建物は Anglican Church がオーナーで、ガス会社が100年ちかく借りていた。ガス会社は1984年に$1.6mで建物を買い取り、1989年に$7.7mでドイツの投資家グループに売却した。

その隣は正真正銘の大聖堂 St Paul's である。同じく1891年に建設された。堂々とした外見の歴史的な建物ではあるが、中は暗く陰鬱な雰囲気なので、ケン・オハラは、ここを通り越して Swanston Street を横切ることにする。

真向かいに歴史的なホテル(パブ) the Princes Bridge Hotel があるので中に入ってみよう。このホテルは1979年までの122年間、ある一族がオーナーであった。 一時期 Alan Bond's brewing company がオーナーであったが、後、Foster's Brewing に移った。

この建物は1852年に倉庫として建てられたが、1861年にホテル(パブ)に改造された。1875年に Henry Young and Thomas Jackson がビジネスを買い取り、経営を続けた。Young and Jackson's はオーストラリアで、有名なホテル(パブ)になった。今でも Young and Jackson's と呼ばれて親しまれている。

このホテルを有名にしたのは、1908年にバーの壁に掛けた Chloe と題する女性のヌード画である。このヌード画はたちまち有名になり、ホテルはメルボルンの観光名所の一つとなった。現在でもホテルの壁に掛かっている。

ホテルの建物も壁の Chloe も、ビクトリア州と国の歴史文化遺産に指定されている。いうまでもないが、ホテルの外に出ている様々な広告はもちろん含まれていない。  


copyright: Ken O'Hara
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